高校生の修学支援制度の効果と影響、文科省が調査

 文部科学省は平成30年6月12日、「高校生等への修学支援の効果および影響等に関する調査研究報告書」を公開した。高校アンケート調査、保護者Web調査、インタビュー調査の3つのアプローチで、修学支援制度の効果などについて分析・把握を行った。

教育業界ニュース 文部科学省
高校アンケート調査・修学支援制度の効果(左/就学支援金、右/奨学給付金)
  • 高校アンケート調査・修学支援制度の効果(左/就学支援金、右/奨学給付金)
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  • 高校アンケート調査・修学支援制度の効果(左/就学支援金、右/奨学給付金)
  • 保護者Web調査・家計所得層別の教育費補助制度の申込比率
  • 保護者Web調査・高校在学中に実際に負担した学費
 文部科学省は平成30年6月12日、「高校生等への修学支援の効果および影響等に関する調査研究報告書」を公開した。高校アンケート調査、保護者Web調査、インタビュー調査の3つのアプローチで、修学支援制度の効果などについて分析・把握を行った。

就学支援制度の新旧対比



 平成25年以前の高校生等への修学支援制度(旧制度)では、公立高校と私立高校に通う生徒の間で教育費負担に大きな格差があることなどが問題点として指摘されていた。そこで問題を解消するため、平成25年の法改正を実施。平成26年度からの高校等学校入学者を対象とした修学支援制度(新制度)のほか、高校生等奨学給付金も創設され、低所得世帯の高校生への修学支援制度は大きく改善されたという。

制度改正の効果



 「高校生等への修学支援の効果および影響等に関する調査研究」は、この制度改正が実際に、どの層の高校生に・いかなる形で・どの程度の改善をもたらしたのか・課題はないのかなどを分析・把握する目的で実施。高校アンケート調査、保護者Web調査、インタビュー調査の3つのアプローチが行われた。事業の実施期間は平成29年9月4日~平成30年3月31日。

 報告書では、「全国高校アンケート調査からみた就学支援金・奨学給付金制度の効果と課題」、保護者Web調査をもとにした「高等学校における教育費補助政策の効果と課題」、「インタビュー調査を通じた高校生等への修学支援制度の成果と課題」などをまとめている。

 全国高校アンケート調査にて修学支援制度の効果を尋ねると、就学支援金では「生徒の家計の負担軽減」について総計88.6%(私立92.9%・国公立87.0%)、奨学給付金では「家計の負担軽減」について総計88.0%(私立85.5%・国公立88.9%)が「効果あり」と回答。しかし、効果について「わからない」の割合が高い項目も多い。

 修学支援金・奨学給付金に関わらず、「高校卒業後の大学・短大・専門学校等進学希望者の増加」「生徒のアルバイトの減少」については7割近く、「学習塾などの学校外教育の利用の上昇」については8割近くの学校が「わからない」と答えている。これらの項目は「わからない」の割合が高いだけでなく、「効果あり」より「効果なし」の比率の方が高い傾向がある。

 報告書では、「高校側の実感をもとにすれば、就学支援金・奨学給付金は、生徒の学校生活や、卒業後の高等教育進学には、それほど効果を発揮していないことになる」と指摘している。

 保護者Web調査では、平成29年11月時点で、高校卒業後2年目の子どもを持つ保護者、高校卒業後1年目の子どもを持つ保護者、高校3年生の子どもを持つ保護者を対象に実施。卒後2年目は旧制度、卒後1年目と高3生の子どもは新制度の対象者となっている。

 家計所得層別の教育費補助制度の申込比率に関して、私立学校の場合は旧制度から新制度への変更に伴い、いずれの層でも申込率が上昇。もっとも申込率が高い低所得層では、卒後2年目(旧制度)63.4%、卒後1年目(新制度)64.8%、高3生(新制度)71.0%となっている。中所得層でも、卒後2年目(旧制度)38.1%、卒後1年目(新制度)52.8%、高3生(新制度)56.5%と上昇が見られた。

 一方、高校在学中に実際に負担した学費を尋ねると、高校3年生の国公立は「年額10万円未満」35.6%、「年額10万~20万円未満」32.2%。私立学校は「年額50万~80万円未満」33.7%、「年額80万円以上」26.3%と、国公立と私立の間で大きな差がある。また、旧制度にあたる卒後2年目の私立における負担額は、「年額50万~80万円未満」37.0%、「年額80万円以上」28.3%となっており、制度の改正による学費負担の変化はあまり見られなかった。

 この調査結果について、「修学支援の新制度は広く利用されているものの、公立高校と私立高校の教育費格差の是正に寄与する効果はある程度限られている」と分析。ただし、効果は「長期にわたる考察の結果に基づいて判断する必要があるため、今後、効果の追跡調査が欠かせない」としている。

 「高校生等への修学支援の効果および影響等に関する調査研究報告書」は、文部科学省Webサイトに掲載されている。 
《黄金崎綾乃》

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