公立中高一貫校の倍率はすさまじい…中学受験で気をつけたい落とし穴

 「小学生生活を犠牲にしない中学受験」(WAVE出版)から、中学受験を目指す親子が救われ、励まされる考え方をご紹介。高校・大学受験しか経験のない親が中学受験の際に注意すべきこととは?

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 6年生まで野球・バイオリンを続けながら難関国立中学に合格した親子の体験記「小学生生活を犠牲にしない中学受験」(WAVE出版)から、中学受験を目指す親子が救われ、励まされる考え方をご紹介。高校・大学受験しか経験のない親が中学受験の際に注意すべきこととは?

高い出願倍率から見えてくること



 中学受験でまず驚いたのは、その出願倍率です。特に公立中高一貫校の倍率はすさまじいもので、ここまで高くなると、運も味方にしないと合格できないのではないかと思ってしまいます。

 高倍率に見慣れると、3倍ぐらいだと低く感じてしまいますが、よくよく考えると不合格になる人が合格者の倍いるということで、十分に高い倍率なのです。中学受験で第一志望に合格できる人はほんの一握りで、不合格者のほうが圧倒的に多い。中学受験とはそういう世界なのです。

 高校受験、特に公立高校の場合は、ほとんどの学校が2倍未満、つまり合格者のほうが多いわけです。トップ校でも中学受験ほどの倍率にはなりません。

 それは高校受験には全体で見ると受験生全員分の合格枠があり、内申で結果が半分決まっていて、学校の先生が進路指導にかかわって生徒に無謀なことはさせないといった理由によるものです。

 中学受験に挑戦する方は、このことを必ず頭に入れておいてください。

 私の息子が合格できたのも、さまざまな幸運が重なったからだと思います。一歩間違えれば、どうなっていたかわかりません。あくまでも健全な小学生生活を犠牲にしないで挑戦すると決めた理由は、「自宅学習中心でも、受験勉強はできるはず」という思いがあったからです。

 でももう一つの理由は、「不合格」という結果になることが怖かったからです。「不合格」になっても、「残念だったけど、得るものがあったので、挑戦してよかった」と思える受験にしたかった。だからこそ、スポーツや習いごとを継続する、健全な小学生生活にこだわったのです。

 そのように思っていた私たちも、入学試験の直前になったときには少し冷静さを失っていたのでしょう。そのようすを察した家庭教師の先生から、「ダメ(不合格)だったときのことも、考えておいてくださいね」という忠告をもらって、はっとわれに返った記憶があります。

 中学受験では、「背水の陣」を敷いては絶対にいけないと思います。合否結果にかかわらず、子どものためになると思えないのなら、中学受験はおすすめしません。それぐらいリスクの高い勝負なのです。

 でも、少し脅してしまいましたが、安心してください。表面上あれほどまでに高倍率になっているのは、一人の受験生がたくさんの学校を受けているからでもあります。

 中学入試は、学校によって受験日がずれているので、多くの学校を受けることができるのです。また、合格実績を上げたい塾が、試験をできるだけ多く受けるように勧めているという面もあるのでしょう。

 どの中学校も辞退者を見越して、募集人数より多めの合格者を出すので、実質倍率は出願倍率ほど高くはありません。今は少子化の影響で、首都圏の中学受験は全体で受験生全員の合格枠があるとも聞きます。

 また倍率が高くなるのは、かなり無謀な挑戦をする人が多いことの表れでもあります。現に私たちの周りにも、「小学校の勉強もろくにできていないのに、その中学校は無理でしょう」という方が何人もいました。高校受験では、中学校の先生が進路指導をするので、そこまで無謀な挑戦はさせないと思います。

 ですから、成績が合格ラインに届いていれば、倍率はそんなに気にしなくていいのです。倍率が上がるのは、合格ラインに届いていない人がたくさん受けているから。そう考えれば、気が楽になりますよね。

中学受験に高校受験の感覚は通用しない



 もう一つ、わが子の実力を正確に見極めるために、私のように高校・大学受験しか経験のない親が中学受験の偏差値を見るときに注意すべきことがあります。

 それは高校受験の模試の偏差値の感覚は、まったく通用しないことです。ここでいう高校受験の模試とは、公立高校を目指す中学生が受ける普通の模試のことです。偏差値50だと、「ああ、クラスの平均ぐらいね」と考える感覚のことです。

 その感覚で、公立の中高一貫校の偏差値が55ぐらいなのを見ると、「あらそんなものなの?ちょっとがんばれば行けそう」「高校受験より、中学から入ったほうが楽そう」

 という錯覚に陥ります。いろんな人の話を聞いても、そのような誤解が多いのです。模試を受けている母集団が違うことはわかっていても、その「感覚」はなかなか補正されないようです。

 おおざっぱに言って、四谷大塚や日能研の中学受験の偏差値に10を足すと、高校受験の偏差値になるぐらいの感覚でいいと思います。偏差値60ぐらいの中高一貫校と、偏差値70ぐらいのトップの公立高校の大学入試実績は似通っていますし、中高いずれからも入れる中学校と高校のそれぞれの偏差値も大体10ぐらい違いますから、あたらずといえども遠からずでしょう。

 つまり、公立中高一貫校の偏差値は、高校受験の偏差値でいうと65ぐらいになります。偏差値65は、正規分布でいうと上位7%ほどなので、35名のクラスだと上位2、3名しか行けないレベルです。

 中学受験の偏差値50は、高校受験でいう偏差値60、正規分布では上位16%ほどなので、35名のクラスで上位5、6名ということです。

 中学受験は結構厳しいということがわかります。

与えられた課題をこなすのに精一杯



 4年生ぐらいまでは、Z会の通信教育も少し物足りないぐらいの量でした。野球チームにも5年生までは塾通いと両立している子が何人かいましたから、塾に通っていてもまだ時間に余裕はあったのでしょう。

 それが6年生になる頃にはかなり忙しくなります。Z会の通信教育も5年生から一気に量が増え、うちの場合は5年生後半から予習シリーズとの併用を始めたこともあり、送られてくる課題の全部をこなすのが大変になってきました。塾に行っていると、もっとそうだと思いますが、子どもは与えられた課題をこなせないと、とても不安になり、落ちこぼれたような気がします。

 6年生にもなると、ある程度の演習量をこなすことが必要なことは否めませんが、後から振り返ると、与えられた課題をこなすだけで精一杯という、受験勉強を進めるうえでかなりまずい状態に陥りがちなのが、中学受験の大きな落とし穴といっていいでしょう。

 なぜなら、「基礎に対する深い理解」のためには、習ったことを十分に時間をかけて咀嚼し、自分のものにしていく時間が絶対に必要だからです。塾通いやその宿題に忙殺されて、受験勉強をする時間がないとすれば、状況はかなり深刻です。

 特に難関中学の過去問を見ると、問題を深く理解できているかを問うものが多いと感じます。逆の見方をすると、「解き方のパターンを覚えているだけの子」をふるい落とす意図があるように思えるのです。

 大手進学塾で成績が伸び悩むと、系列の個別指導塾を勧められる話を聞いたことがあります。このことは「自分のペースで勉強する時間が必要である」ことを証明しています。

 うちの場合は開き直りました。どうせ全部できないし、全部やらなきゃ合格できないわけでもない。

 しかしそうは言っても、一つの教材をやり切ることは達成感やモチベーションにもつながるので、こなせる量を見極めながら「ここまではやろう」「これは飛ばそう」というのをあらかじめ決めて取り組むようにしました。「ここはわかっていない」ことに気づいたときは、計画は二の次にして、それがクリアできるまで時間をかけて教えました。

 このような臨機応変の対応をするのは、個別指導でないと難しいですよね。面倒を見てもらっているのは親のほう「学校は面倒見がよくないわよね、やっぱり塾に行かせないと」

 中学校、高校と進学するにつれ、息子の友だちのお母さんから聞かされる愚痴で多いのがこれです。

 伝統ある進学校ほど、大人になる準備として子どもの自主性を引き出そうとしている。私はそう受け取っているのですが、反論をしても仕方がないので話に付き合っていると、その愚痴は結局、「親へのフォローアップがない」ということだったりするのです。

 塾通いをさせるのもお金を払うのも親なので、塾が親の満足するようなサービスを提供するのは当然です。「受験生を持つ親がどのような心理状態であるのかを知りつくしていることが、塾経営の重要なノウハウの一つ」というのをどこかで聞いたことがあります。「学校と違って、塾は面倒見がいい」と感じるのは、親へのフォローアップが充実しているからで、「面倒を見てもらっている」のは実は子どもではなく、親なのかもしれません。

 とりわけ本来受験をする年齢ではない小学生に背伸びをさせる中学受験では、「子どもの将来のためになること」と「親が満足してくれること」の間にギャップが生じる余地が大きいように思えます。「塾とはそういうもの」ということを理解したうえで、塾から発信される情報は鵜呑みにせず、フィルターを少しかけてインプットするのが賢明でしょう。

学校のランキングなんて存在しない



 昔、私たち夫婦の結婚式の準備をしていたときのことです。

 結婚式場で「当日の食事メニューを選んでください」と言われ、料理の写真をいくつか見せられました。早い話、「松、竹、梅のどれにします?」ということなのですが、並べてみるとどうしても一番安いメニューは見劣りしてしまいます。「うーん」とかなり迷った挙句、費用を少しでも節約したかった私たちは、一番安いのにしました。

 それが結婚式当日、親戚のおばさんに「食事も豪華だったわね。さすが東京の結婚式場ね」と言われたのです。メニューを並べて比べてしまうと差が大きく見えてしまうのですが、そもそも結婚式場の食事が立派でないわけがないのです。

 これと同じで、学校説明会に参加して気に入った学校を目指して受験勉強をしていた私たち親子も、「中学受験偏差値ランキング」を見て、ランキングが上の別の学校があると、どうしてもそこが気になったりしました。

 毎年雑誌などで発表される「東大合格者数ランキング」もそうです。「入学試験は個人競技だ」とわかってはいても、まったく気にならないかというと嘘になります。

 でもこれが、中学受験の大きな落とし穴なのです。

 なぜなら、成績が上がって目標を上へと誘導されるのは、嬉しいことのようで実は子どもにとってはゴールを遠ざけられるようなもの。目標とした志望校への合格なら余裕があったのに、「誘導」のせいで受験勉強がどんどん苦しいものになってしまいます。

 大学受験なら受験生は大人ですから、必死でがんばるのは構いません。ダメなら浪人して再チャレンジできます。でも中学受験をする小学生は中学に入学した後も勉強しなくてはならないのですから、「受験勉強が苦しかった」という思いは絶対にさせたくないと私は思っていました。

 さらに言うと、そもそも学校のランキングなんてものは実在せず、部外者が勝手につくっているものだということに気づいたのです。

 まずは偏差値表。これは学校同士が競った結果でも何でもなくて、塾やそのほかの受験産業がそれぞれ勝手につくっているものです。業者によって違うし、同じ業者でも模試の時期によって変わります。また2、3年もすればガラッと評価が変わることもあるでしょう。特に中学受験は受験生が小学生なので、基本的には団子レース。偏差値2、3ポイントの差なんて、ほとんど誤差です。

 偏差値表は併願校を選ぶときに参考となる一つの「ものさし」に過ぎません。大学受験合格実績も、一校からの合格者数は毎年変わりますし、どだいそれは先輩個々人の結果であって、多いからといって在校生に何かが有利になるわけでもありません。

 大学受験は結局、中学、高校での本人のがんばり次第。本人ががんばれる環境かどうかは、その学校がその子に合っているかどうかによるのです。

 ましてや中学、高校は大学受験のためだけに行くわけではありません。何でもランキングにしてしまうと、一方が他方より優れているように見えてしまいますが、そんなことはありません。どちらもいい学校なのです。

偏差値ってどうやってつけているの?



 中学受験を振り返ると、「偏差値」も大きく勘違いされているとつくづく感じます。

 たとえば教育雑誌などで、入試の偏差値と卒業生の大学進学実績を比べて、偏差値が低い割には、進学実績がいい学校が「お得だ」というのがありますよね。実はこれ、その学校の生徒全員の入学時の実力が同じ偏差値でないとそうはならないはずなのですが、それに気づかないで見ているということはないでしょうか。

 また少しでも偏差値が上の学校に誘導する大手進学塾や、それに振り回されている保護者が、まるで階級でもあるかのように、偏差値が1ランク上の学校の生徒は全員、それより下の学校の全員より優秀かのように勘違いしているようにも見えます。せっかく第二志望に合格したのに、なぜか卑屈になっている人がいるのも、そういう勘違いからきているのではないでしょうか。

 私自身、子どもが中学、高校へと進学して、実感としてわかるのですが、実際にはどんな学校でも、トップクラスの生徒と底辺の生徒では実力に大きな差があります。言うまでもなく、進学実績に貢献しているのは成績がトップクラスの生徒です。その層が何人いるかが進学実績につながるわけで、底辺の層がどのくらいのレベルかなんて、あまり関係がないのです。

 学校の偏差値は、入試のボーダーラインを基準にはじき出される数字です。つまり学校の偏差値が高い、低いというのは、入学時の底辺のレベルの比較でしかないのです。

 もちろん裾野が高いほうが頂上も高い傾向にはあるでしょうが、必ずしもすべてがそうだというわけではありません。進学校を比較して偏差値が数ポイント高い、低いという差なんて、学校の中の個々人の差に比べればはるかに小さいのです。

 中堅校と言われる学校のトップクラスの子と、最難関校と言われる学校の底辺の子とでは、どちらの実力が上かは大学進学実績を見れば明らかです。

 そういうケースは、最難関校の子が入学してからサボった、中堅校の子は入学後にがんばったというふうに見えるかもしれません。もちろんそういう側面もあるでしょう。でも、「入学時から、最難関校の底辺の子より優秀な子が中堅校にはいた」と考えるほうが正確だと思います。

 中学受験が必要以上にヒートアップしているのは、少しでも偏差値が上の学校に入れば、上位階級に所属できて優位に立てると思い込んでいる、もしくは思い込まされている、受験生の保護者の大きな勘違いのせいなのかもしれません。でも実際には、学校の偏差値より、学校の中でどのくらいの位置にいるかのほうが、はるかに大切なのです。

 だからこそ「入学後に本人がやる気を出してがんばれる環境」といった視点で志望校を選ぶべきだし、入学後の学習意欲をそぐほどの受験勉強を小学生のときにやらせてはいけないのです。

 ちょっと冷静になって考えれば、小学生のときの塾のテストの結果や、そこから出た順位で将来が決まると思うこと自体が、バカげていると思いませんか。

 近くに気に入った学校があるから挑戦してみる、縁があって合格できた学校に入学する。本来中学受験とはそんなものです。そういう原点に返れば、中学受験も健全なものにできるはずです。

中高一貫校の東大合格者数増加の本当のわけ



 先ほどの項でもあげた東大合格者数ランキング。どうでもいいと思いつつ毎年気にして見ていると、近年は私立の中高一貫校の合格者の割合が増えています。

 これを見て、「やっぱり最近は、公立高校より私立の中高一貫校のほうが大学受験には有利なのかな?」「優秀な学生は、中高一貫校に流れているのかな?」という印象を受ける方が多いかもしれません。

 実はこのことが中学受験人気にもつながっている一因でもあるのでしょうが、この傾向の要因として、近年の大学受験の構造的変化の影響があげられると私は思います。

 まずは地元志向の影響です。地方出身の優秀な学生による首都圏の大学受験への参戦が減ったため、各大学は昔と比べるとかなりローカル化しています。東大もその例外ではなく、昔より地元、つまり首都圏出身の学生の割合が大きくなっています。

 歴史的に見ると東京を中心とする首都圏は、明治時代に公立の学校が十分に整備される前から多くの私立学校が設立されていたこともあり、私立の中高一貫校がほかの地域と比べて圧倒的に多いのが特徴です。そのため、東大の地元である首都圏出身の学生の割合が増えると、私立の中高一貫校出身者の割合も自然と増えるのです。

 補足ですが、ここで東大の地元、東京の高校事情について述べると、1967年に始まった「学校群制度」──複数の都立高校をグループ化して入試を行い、合格者をそのグループに属する学校にランダムに振り分ける、つまり受験生が自分の進学する高校を選べない制度──によって、都立高校の人気は凋落し、私立学校人気に拍車をかけた経緯があります。その後制度は何度も改正され、都立高校の人気も回復していますが、いまだに「私立優位」の意識が強く残っているのが実状です。

 もうひとつの構造的変化は浪人生の減少です。高校受験がない分、カリキュラムの前倒しができる中高一貫校出身者は、「現役合格」には有利です。浪人生の参戦が減り、現役率が高まることでも、中高一貫校出身者の割合は大きくなります。

 中高一貫校の中でもその年によって浮き沈みがあるので個別の要因もあるでしょうが、全体として近年の構造的な変化という要因もあることを考えると、表向きは変わっているように見えるランキングも、中身はそんなに変わってはいないのです。

 だから中学受験がダメだったら、私のように公立中学から高校受験をすればいい。「何が何でも私立中高一貫校」と思わなければ、中学受験はずいぶん楽になるはずです。

小学生生活を犠牲にしない中学受験

発行:WAVE出版

<著者プロフィール:かずとゆか>
 フルタイムの共働き夫婦。執筆担当の夫はずっと塾には通わず公立小中から県立高校を経て東大・京大現役ダブル合格。高校在学中には交換留学生としてオーストラリア・クイーンズランド州に1年間滞在した。東京大学工学部卒業後、外資系証券会社に入社、数社を渡り歩き現在に至る。取材担当の妻は都内私立中高一貫の女子校から私立大学工学部卒業の当時は希少だった理系女子。邦銀のロンドン拠点赴任を経て現在は外資系証券会社に勤務。仕事は絶対に辞めないというこだわりのもと子育てや家事との両立を目指している。子育てが一息ついた現在は社内の東北被災地ボランティアを通し社会貢献にも努めている。
勉強は塾に行かなくてもできるという信念から、息子も大手進学塾には通わずに中学受験に挑戦。少年野球とヴァイオリンを最後まで続けながら都内国立中学に合格した。ブログ「大手進学塾に行かない共働きの中学受験」を通して健全な小学生生活を犠牲にしない中学受験を提唱。


《リセマム》

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