「五月病」10連休の影響で例年より重症? 子どもに見られる症状と対策

 例年より長かった2019年のGW。子どもをもつ保護者は、どのようなことに気をつけるべきか。毎年話題となる「五月病」について解説する。

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「五月病」10連休の影響で例年より重症? 子どもに見られる症状と対策
  • 「五月病」10連休の影響で例年より重症? 子どもに見られる症状と対策
 例年より長かったゴールデンウィーク(GW)。長い休み明けは、もとの生活リズムやマインドに戻りにくいこともあります。この時期、保護者は子どものためにどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

 毎年話題となる「五月病」について、神奈川県と埼玉県で計22年小学校教諭として教壇に立ち、現在は帝京平成大学講師として、小学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの育成や指導に携わってきた経験にもとづいて解説します。

「無理せず」「少しずつ」という思いを親がもつ!
急かしてばかりでは親も子も疲れる
・連休明けに向けて担任がしている工夫とは?
・「学級崩壊」の発端にもなる?
学校でのようすを知るためのポイント
・学年共通
・小学校の低学年(1~2年生)
・小学校の中学年(3~4年生)
・小学校の高学年(5~6年生)
ゴールデンウィーク(GW)明けの過ごし方・親子の関わり方
子どもの変化に気付いたとき、親ができること


急かしてばかりでは親も子も疲れる



 2019年は例年より長かった10連休のゴールデンウィーク(GW)でした。通常のGWでも子どもが学校への適応で苦労するケースがあります。今年はそれがさらに顕著になるのではと想像します。

 子どもの小学校生活への影響はどのようなことなのか、また、この時期毎年話題となる「五月病」について、特に子どもに見られる症状について見ていきましょう。

 基本的には、親が焦らないことが大事なのだと思います。例年以上にさまざまな不適応が考えられます。そういったことを意識し「無理せず」「少しずつ」という思いを親がもつ必要があるのだと思います。子どもを叱ったり、急かしたりするばかりでは親も子も疲れます。短期的な視点だけでなく、中期的、長期的な視点で考えていくことで、少しずつ状況が改善されていくこともあります。

連休明けに向けて担任がしている工夫とは?



 例年のGWでも学校への適応で苦労する子どもがいます。今年は冬休みや春休みに匹敵する長さの10連休です。学校において担任は新年度の学級作りを始めからやるような感じになるだろうと思います。

 通常、4月はクラスのルール作りなどに取り組みます。連休が終わると例年でも子どものそういったものへの意識は薄くなり、4月の始めに戻ったような感じになります。それが今年はもっと顕著になるのだろうと想像します。先ほど、保護者が気持ちに余裕をもったほうがよいということを書きました。自分の子どもだけでなく、学級集団としてもそれまでできていたものができなくなっているということもあるはずです。そういったことが原因のトラブルが起こる場合もあると思います。親も焦らず、気持ちに余裕をもって見守ることが大事なのだと思います。

「学級崩壊」の発端にもなる?



 この時期には「学級崩壊」の兆しが見えてくることもあります。「学級崩壊」は担任と子どもとの関係において生じる問題です。小さなボタンの掛け違いのようなものがきっかけとなり、それが大きなものとなっていってしまいます。

 ボタンの掛け違いのきっかけになるものの1つは「ルール」についてです。誰もがわかっているようなルール、たとえば、休み時間の終わりの時間などに関しては、大きな問題は起こりません。掲示物などを見ればわかりますし、チャイムも鳴ります。難しいのは子どもでは判断に迷うような場合のことです。たとえば、やり忘れてきた宿題への対応です。担任が、ある子どもには「休み時間にやり忘れた宿題をやってから遊ぶように」と指示をしたのに、ほかの子どもには違う指示を出してしまったとします。そういったことが続くと子どもは「不公平だ」と感じ、担任への信頼をなくしていきます。小さなことがきっかけとなって、クラスが崩れ出していきます。そういったことが顕著になるのが連休明けの5月です。

学校でのようすを知るためのポイント



 学校での乱れなどを家庭で把握できる場合があります。学年に関係なく、共通しているものと学年別で気にしたほうがよいものがあります。まず学年に関係なく、共通で見えてくる注意点としては「体調不良」「乱暴」「悪口」などです。

学年共通



 「体調不良」は具体的な症状としては「お腹が痛い」「頭が痛い」「熱っぽい」などの訴えを子どもがしてくるものです。人間の心と体は密接に関わっています。特に子どもはデリケートなので、精神的な負担がそのまま腹痛などの身体の異変となって現れてくることがあります。熱がないからといって「大袈裟じゃないの?」「嘘なんじゃないの?」と疑うような発言は避けたほうがよいでしょう。

 「乱暴」な行動をすることもその子どもの内面が表れているものであること多いです。クラスなどでうまくいかないことがあると心がザラザラとなることがあります。それが原因となって少し気が緩み、家での行動において乱暴な行動として現れてきます。

 「悪口」は、クラスなどの中でうまくいっていない相手がいる可能性が伺えます。少し状況を聞いてみて、必要があれば何らかの対応を取るとよいです。もしその悪口の対象が担任の場合は特に注意が必要です。子どもが担任の悪口を言うような状況では、友だちへの悪口以上にきちんと対応する必要があります。子どもが担任を信頼できないような状況では、良い教育などができなくなってしまいます。

 子どもから話を聞いたときには子どもと一緒になって担任の悪口を言うことは避けたいです。子どもと担任の関係が悪くなることは、子どもにとっても親にとってもマイナスであることが多いです。子どもが担任の悪口を言った際には、できるだけ担任寄りの立場をとって、子どもにはわかりにくい大人の事情があるのではないかなどと話しておくのがよいでしょう。

 年齢別で違いのあるものもあります。低学年、中学年、高学年に分けて説明します。

小学校の低学年(1~2年生)



 小学校の低学年(1~2年生)の時期に注意したいことは「交通事故」です。慣れによる油断が出てくることがあります。高学年よりも1つのことに夢中になると周りが見えにくくなる子どもも多いです。そういったことが事故につながる危険性につながります。

 また、小1の場合は、幼保と小の段差の問題にも気を配りたいです。10日間の休みで小学校にせっかく慣れたものが台無しになり、以前の状態に戻ってしまうこともあります。始めからやり直すような気持ちで親も取り組んでいくとよいのではと思います。

中学年(3~4年生)



 中学年(3~4年生)の時期は「ギャングエイジ」といわれる時期でもあります。友だち関係でトラブルが起こる可能性があります。また、友だちと一緒にやんちゃなことをして問題になるようなことがあります。勢いで警察沙汰になるようなことをしてしまうこともあります。たとえば、コンビニでの万引きなどです。

高学年(5~6年生)



 高学年(5~6年生)の時期は、ほかの学年とは少し違った問題も生じてきます。その子どもの発達にもよるのですが、思春期に差しかかります。場合によっては大人と同じような感じ方、考え方をする子どももいます。人間関係、成績、進路などでの悩みやストレスも増えてきます。

 また、現在はネットによるトラブルもあります。ネットいじめのようなものです。これらは親が子どものころにはなかったものです。こういったものも含め、この年代のトラブルは親が把握しにくいという特徴があります。子どもが反抗期に入る場合もあり、親子でのコミュニケーションが取りにくくなる場合もあります。親が何でも知ろうとして、あれこれと聞き過ぎたり、スマホや携帯を勝手に見てしまったりすることは逆効果になる場合が多いです。子どもが繊細な状態になってくるほど、親子の信頼関係をしっかりと維持していきたいものです。

ゴールデンウィーク(GW)明けの過ごし方・親子の関わり方



 GWといっても、親が仕事に行かなければならない家庭もあります。GWを子どもと一緒に過ごせた家庭と、あまり過ごせなかった家庭があると思います。前者が「良く」、後者が「良くない」というものではないでしょう。連休前に行われた報道機関のアンケートでも10連休に対し、肯定的でない意見の人も一定数いました。

 一緒にどこかに出かけたから「良い」休みであり、一緒に出かけられなかったから「良くない」休みだというものではありません。そういったことよりも親子で何をしたのかが大事であり、それによって子どもの育ちにつながったのか、親子の信頼関係を強めることができたのかということがポイントとなります。これらは連休の過ごし方だけでなく、普段の生活でもいえることです。これは親が子どもと関わる際の「量」と「質」の問題と似ています。

 母親が専業主婦で家にいることが多く長時間子どもと関わることができる家庭のほうが、共働きで子どもと関わる時間が少ない家庭よりも、子どもが良く育っていくかといえばそうではありません。親子の関わりは「量」よりも「質」が大事です。子どもと関わる時間が限られているとしても、その時間の過ごし方を大切にすることができている家庭では良い育ちが期待できます。今回の連休も同様です。旅行などに行かれなくとも、子どもと短いながらも充実した時間を共有することができればそれでよいのだと思います。

子どもの変化に気付いたとき、親ができること



 子どもの変化に気付いたとき、親は心配になる場合もあると思います。そして無理にでも聞き出そうとすることもあると思います。子どもが心配であるという親の気持ちは理解できますが、それがマイナスに働くこともあります。特に小学校の高学年になり、思春期が近づいてくると親には言いたくない悩みも出てきます

 学校においては、担任以外にも養護教諭などがそういった悩み事を受け止める役割を担っています。心と体は密接に関わっています。悩み事があることで、腹痛や頭痛など体に変調をきたすことはよくあることです。そういったケースにおいて保健室で休んでいるときに養護教諭に悩み相談をするのはとても自然なことです。保健室は時間帯によってはほかの人(子どもや教師)がいない状況になり、相談をするのに最適な空間となります。

 また、現在は、そういった子どもの悩みの受け皿として、学校以外にもさまざまな機関が相談窓口を設けています。たとえば、市区町村や都道府県が電話メールLINEなどのSNSでの相談窓口を設置しています。特にメールやSNSは、子どもにとって気軽に相談できるものです。匿名で相談ができる場合もあります。

 親としては、子どもが困っているような姿を見たときに、そういった選択肢があることを教えてあげるのもよいでしょう。子どもの年齢が上がるに従って、親が直接できることは少なくなってきます。「親離れ」「子離れ」といわれるものでしょう。親としては少し寂しい面もありますが、それが「自立」につながる一歩なのだと思います。

 今回、連休明けの時期に親が子どもと関わる際に心掛けるとよいことをまとめました。少し特殊な時期である「連休明け」です。親も子どもも担任も余裕がなく、バタバタとしてしまいがちな時期です。少しだけ精神的に余裕をもつことでうまくいく場合もあります。この時期を上手に過ごし、さらなる学びにつなげていってもらえればと思います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師、平成30年4月からは帝京平成大学講師として、子どもの未来を支える小学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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