鉄不足を尿検査で発見できる可能性を確認… ファンケル

 ファンケルは、東京都予防医学協会と共同実施した思春期の子供における鉄欠乏状態の尿フェリチン検査を使用したスクリーニング評価の研究成果を、2023年4月開催の第126回日本小児科学会学術集会で発表した。尿フェリチン測定で、鉄不足を推定できる可能性があるという。

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都内の中学校における中学1年生から3年生の鉄欠乏者の割合
  • 都内の中学校における中学1年生から3年生の鉄欠乏者の割合
  • 血清フェリチンによる「鉄欠乏者」と「非鉄欠乏者」の尿フェリチン測定数値
  • 尿フェリチンの測定結果と実際の鉄欠乏症状態の有無

 ファンケルは、東京都予防医学協会と共同実施した思春期の子供における鉄欠乏状態の尿フェリチン検査を使用したスクリーニング評価の研究成果を、2023年4月開催の第126回日本小児科学会学術集会で発表した。尿フェリチン測定で、鉄不足を推定できる可能性があるという。

 スクリーニングでは、学校検診で取得した東京都内の中学1年生から3年生の生徒562人(女子269人、男子293人)の血液および尿の検体を用い、鉄欠乏の鋭敏な指標であるフェリチン(血液検体から血清フェリチン、尿検体から尿フェリチン)を測定した。

 そして、血清フェリチンの測定結果から鉄欠乏者と非鉄欠乏者を分け、それぞれの該当者で尿フェリチンの数値を比較した。さらに、尿フェリチン検査による鉄欠乏状態を検出するスクリーニングの可能性も評価した。

 結果は、一般的に鉄欠乏状態と判定される血清フェリチンが12ng/mL未満の女子中学生の割合は、1年生が11.7%、2年生は17.2%、3年生では28.0%となり、学年が上がるとともに鉄欠乏と判定された学生が増加した。思春期は急激な発育にともない、鉄の需要が増加する。特に女子は月経により身体からの鉄の排出量が増加するため、鉄欠乏状態に陥りがちだという。

 次に、尿検査でも鉄欠乏状態の有無の推定が可能かについて確認した。血清フェリチン12ng/mL未満を「鉄欠乏者」、それ以上を「非鉄欠乏者」とし、男女別に「鉄欠乏者」と「非鉄欠乏者」それぞれの尿フェリチン測定数値を調べた。その結果、男女ともに「鉄欠乏者」は「非鉄欠乏者」に比べ、尿フェリチンの平均値が有意に低いことがわかった。このことから、尿フェリチンを測定することで、鉄欠乏状態の有無を推定できる可能性が示されたという。

 最後に、尿フェリチンが鉄欠乏状態のスクリーニングに有用であるかを検証。男女別に鉄欠乏の疑いを判定する尿フェリチン基準値の算出を、尿フェリチンの測定結果より統計的に行い、基準値より高い場合を「鉄欠乏疑い無し」、低い場合を「鉄欠乏疑い有り」とした。尿フェリチンの測定で、「鉄欠乏疑い有り」と判定された女子学生は68人、男子学生は66人、「鉄欠乏疑い無し」と判定された女子学生は201人、男子学生は227人であった。

 鉄欠乏状態の判定は、従来血液検査で実施する。だが、中学生等の思春期の血液採取は、少なからず身体に負担がかかる。そのため、事前にスクリーニングを実施することで、負担なく鉄欠乏状態を早期に発見する可能性があるという。

 今回の調査では、すべての鉄欠乏者を判別するまでには至っていないものの、陰性的中率は高く、採血を不要とする尿フェリチン測定が鉄欠乏状態のスクリーニングには有用な方法である可能性が示唆された。尿フェリチン検査を使用した鉄欠乏状態のスクリーニング評価は、これまでに報告がなく、今回が初だという。この方法を活用することで、思春期におけるQOL(生活の質)、学習意欲の低下につながる鉄欠乏状態、貧血の予防に貢献するとしている。

《いろは》

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