教育ICTフォーラム、小学校での画期的な実践事例

 コンピューター教育開発センター(CEC)は、3月2日、3日に平成23年度「教育の情報化」推進フォーラムを開催した。「多様化するICT環境で学び合おう」をテーマに、様々な視点から成果発表が行われ、来場した多数の教育関係者で賑わった。

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平成23年度「教育の情報化」推進フォーラム
  • 平成23年度「教育の情報化」推進フォーラム
  • 津市立新町小学校の学生がAETと正しい発音を練習している場面
  • 朝来市山口小学校、従来の算数の授業
  • 朝来市山口小学校、ワコムタブレットの設置
  • 朝来市山口小学校、タブレットでの筆算
 コンピューター教育開発センター(CEC)は、3月2日、3日に平成23年度「教育の情報化」推進フォーラムを開催した。「多様化するICT環境で学び合おう」をテーマに、様々な視点から成果発表が行われ、会場は全国から集まった多数の教育関係者でにぎわった。

 企業展示コーナーには40社がブースを設け、校務支援システムから学生用デジタルドリルまで、幅広い商品を教育関係者にアピールしていた。2日の午後から開催された企業発表では、10社が新商品の紹介や活用事例などを発表。教育ICTに携わる企業と教育現場のつながりが深いものになりつつある様子がうかがえた。

 学校でのICT活用事例の紹介も行われ、小学校部門では、英語音声データーベースの構築や、卓上タブレットを用いた授業の様子など、担当教員の工夫と熱意が感じられる発表が続いた。三重県津市立新町小学校の西村和貴教諭は、外国語活動における英語音声データーベースの事例を紹介。まず小学生にも親しみ深いカタカナ語を利用し、簡単な英短文を生徒に作ってもらう。それらをAETに発音してもらい、正しい発音を覚えた上で、音声データーベースに録音していく。

 生徒が自分の発音を登録した後は、自分の音声を確認しながら発音の修正をすることも、クラスメイトの発音に対してコメントを残すこともでき、生徒たちは友人のコメントに励まされながら英語学習を楽しんでいるという。また、実践の事前・事後を比較したアンケート調査では、英語を楽しく感じる生徒が増えただけでなく、英語と日本語の発音の違いがわかると答えた生徒も増えたという。

 兵庫県の朝来市山口小学校の國眼厚志教諭は、ワコムタブレットを活用した算数の授業を紹介。クラスに5台(先生用1台と生徒用4台)の卓上タブレットを用意し、先生と生徒がスクリーンに映し出された画面を共有することができる。紹介された授業では、タブレット上で生徒が順番に掛け算を筆算していき、画面に映し出された解き方や答えに先生やクラスメイトがリアルタイムでコメントしていく。黒板で1人ずつ筆算するより効率がよく、解説しながらクラスの前で解答することにより、リアルタイムでフィードバックがもらえる。生徒は自分がどこで間違えたかすぐ知り、課題がはっきりするという。先生、生徒ともにメリットのあるタブレットの活用方法だ。

 國眼教諭は、掛け算以外にも、図やグラフを使う授業にはタブレットが適しているという。毎回黒板に図を書く必要がなく、タブレットなら実際に定規などを使いながら入力することも可能だからだ。紙や黒板に書く感覚でタブレットに入力できるのがワコムタブレットを選んだ理由だという。

 上述の事例のように、教育ICTの活用方法は様々だが、不安もあるという。國眼教諭のクラスでは、タブレットが机から落ち、破損する危険性もあるため、細心の注意が必要だという。また、床上に配線を講じているため、班での活動、机の移動、掃除などが大変だという。

 発表の中で目立ったのは、学校としての組織的な取り組みより、先生個人が工夫したクラスレベルでの事例だ。教育ICTのメリットが組織レベルで浸透するにはまだ時間と成功事例が必要なのが現状だろう。だが、発表が行われた各会議室が席数以上の教育関係者でいっぱいになっている様子を見ると、ICT導入に賛同する関係者がたくさんいることは間違いない。教育現場の今後の変化、そして来年度の実践事例が楽しみだ。
《湯浅大資》

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