広がる「地方留学」とは?経験者4人中3人が成長実感

 日本財団は2018年6月20日、地域の高校に入学する「地方留学」の全国調査実態調査の結果を発表した。「地方留学」を経験した生徒の4人に3人が、総合的な成長を実感。また、都市部在住生徒の約4割が「地方留学」に関心を有していた。

教育・受験 高校生
地方留学を実施する高校の有無(受入れ側調査:教育委員会)
  • 地方留学を実施する高校の有無(受入れ側調査:教育委員会)
  • 地方留学の効果認識(受入れ側調査:教育委員会)
  • 地方留学による成長実感(経験者調査)
  • 地方留学で進学した地域に対する意識(経験者調査)
  • 地方留学への関心(ニーズ調査:左/生徒、右/保護者)
  • 「地域みらい留学」とは
  • 日本財団
 日本財団は2018年6月20日、地域の高校に入学する「地方留学」の全国調査実態調査の結果を発表した。「地方留学」を経験した生徒の4人に3人が、総合的な成長を実感。また、都市部在住生徒の約4割が「地方留学」に関心を有していた。

 2018年6月15日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」では、地方への新しい人の流れをつくるための施策として、「地方の高等学校等への地域外就学等の促進」を掲げている。日本財団によると、施策は高校進学段階において親元を離れ、それまで居住していた都道府県外の公立校へ進学する「地方留学」という進路選択の形として広がりつつあるという。

地域留学とは



 地域留学とは、都道府県の枠を越え、地域の学校に入学し、高校3年間を過ごす公立高校進学の進路選択肢。1学年の生徒数は30人から150人で、少人数教育を採る。Webサイトによると、寮費は食費込みで1万円~6万円程度。自然豊かな環境で、学校だけでなく地域住民とのコミュニケーションを通じた学習環境に身をおけるという。地域・教育魅力化プラットフォームでは、地方留学を「地域みらい留学」として名付け、高校や教育委員会といった関係者間のプラットフォーム化に取り組んでいる。

地方留学の推進に関する調査研究…認知や効果



 「地方留学の推進に関する調査研究」は、全国的な地方留学の実態把握を目的としたもの。教育委員会や高校向けに行われた「地方留学の実施、受入れの実態」「地方留学を経験した生徒の実態」調査のほか、都市部(三大都市圏または政令指定都市)在住の生徒と保護者向けに行われた「地方留学に対するニーズ」調査の結果を公開している。

 受入れ側調査では、14の首長部局、41の教育委員会、71の高校が回答。教育委員会に地方留学を実施する高校の有無を尋ねると、「所在していない」は37.8%で、62.2%は「都道府県教育委員会が所管」または「別の組織が所管」と回答。地方留学の効果については「わからない」という回答も多いものの、4割以上の教育委員会は「生徒の学習意欲の高まり」「生徒の意欲・態度の高まり」「地元高校生への教育上の好影響」などに「かなり効果を感じる」「一定程度効果を感じる」と回答した。総合評価では約6割が効果を感じていることがわかった。

 一方、経験者調査では、地方留学経験者178人に地方留学による成長実感を質問したところ、76.4%が総合的な成長について「伸びた」「まあまあ伸びた」と感じていた。具体的な項目では、「他者と協力する力」78.1%がもっとも多い。地方留学で進学した地域に対する意識では、約4割の生徒が「将来もこの市町村・都道府県に何らかの形で関わりたい」「将来もこの高校に何らかの形で関わりたい」「将来的にこの市町村(または都道府県)で暮らしたい」などの意向を示している。

 ニーズ調査では、アンケート回答者(都市部在住の生徒および保護者)に対して地方留学に関する情報提供を行い、その後の関心の有無について尋ねた。すると、生徒の32.4%が「どちらかと言えば関心がある」、6.6%が「とても関心がある」と回答。4割近くが関心を持っていることがわかった。

 保護者の関心については、23.9%が「関心はあるが不安の方が大きい」、16.6%が「かかる金額が許容範囲であれば進学させてみたい」、1.6%が「親も一緒に行く形であれば進学させてみたい」と答え、「進学させてみたい」は5.4%。関心を示した割合は47.5%にのぼるが、金銭面やそのほかの不安の大きさもうかがえる結果となった。

 日本財団では、地方留学の効果に対する肯定的な反応が得られている一方で、地方留学に関する情報が可視化されていないことや、進路選択のうえで必要な情報が需要者に届いていないことなどを課題としてあげている。地方留学の効果・実態の把握、ニーズの顕在化とそれに伴う実施校の拡大、実施地域・実施校における関係者との協力体制の強化など、地方留学推進の好循環を生み出すことを求められると分析した。
《黄金崎綾乃》

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