【大学受験2023】共通テスト英語、3年目にして分量・難易度が安定…J PREPが分析

 2023年1月14・15日に終了した2023年度大学入学共通テスト。2023年度の共通テスト英語について、分量や語彙の難易度、今後の傾向と対策等、J PREP代表の斉藤淳氏らの問題分析を取材した。

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 英語塾J PREPは2023年1月15日、「大学入学共通テスト英語試験分析セミナー」をオンラインで開催した。大学入学共通テスト(旧センター試験、以下、共通テスト)英語試験の翌日となったこの日、同塾がこれまで積み上げてきた大学入学選抜試験の試験問題分析をもとに、歴史的な出題傾向の変化をふまえつつ、3回目となった共通テストにおける英語試験の問題の傾向と対策についてわかりやすく解説した。

 セミナーでは、3つの視点で共通テスト英語試験を分析。元イェール大学助教授でJ PREP代表の斉藤淳氏がデータ解析の視点から最新の定量分析を、また、J PREP国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏が経験豊富な大学受験統括講師の立場から試験分析と今後の対策を、同塾国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏が英語を母語とする立場から共通テストにおける英語試験の特徴を解説した。

データマイニングにより共通テストを分析したJ PREP代表の斉藤淳氏

 斉藤氏は「共通テスト移行時に英語の分量が著しく多くなったものの、今年は分量・難易度ともに昨年と大きく変わらず、共通テストとして安定した」と指摘し、「膨大な量を正確に解くには、日常的に英語で情報を読み、英語で応答する本格的な英語適応能力が有効になる」と述べた。

2023年度共通テストのデータ解析を行った「英語塾J PREP」

共通一次、センター試験、そして共通テスト…分量が増え難化傾向

 J PREP代表・斉藤淳氏は、データに基づいて今年の共通テストの概要を説明した。斉藤氏は比較政治経済学を専門としてイェール大学で教鞭を取っていた経験から、これまでさまざまな英語試験の定量的・計量的な分析およびテキストマイニング(テキストの統計分析)を行っている。

 そうした実績を踏まえ、まず「入試英語の難易度は何で決まるか」について、英語そのものの難しさにおける項目として、分量語彙背景知識設問の4つを示した。本セミナーでは、とりわけ「分量」と「語彙」の2つの項目に焦点をあてて難易度を分析すると説明。そして、同様の観点でこれまで分析してきた過去の英語試験と比較しながら、昨今の大学入試英語における特徴を示した。

入試英語の「難しさ」の指標

 まず昨今の大学入試英語の特徴として、1989年と2021年の難関大学のそれぞれの英語試験を比較すると、配点自体はあまり変わらないものの、英単語の分量がかなり増えている事実をあげ、日本の大学入試英語のこの30年のトレンドとして「全般的に分量が増えたことで難化している」と述べた。一方で配点も高いままのため、「入試の合否は英語で決まるといっても過言ではない」と斉藤氏。

英語を認識し、英語で返す…迅速な処理が必須に

 そのうえで、大学入試の共通試験について、1979年に始まった共通一次から、1990年開始のセンター試験、2021年開始の共通テストの流れを振り返り、この44年間の英語入試の変化を概観した。

 各年の試験について、テキストに含まれる単語がCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠:言語能力の習得レベルを測るための国際的な指標)のどのレベルに相当するか、英単語の難易度分析サイト「Text Inspector」を使って分類した。まず1989年の共通一次の試験に関しては、100分の試験時間で総英単語数2,728語が出題され、試験中に求められる1分あたりの英単語処理速度は27.3語だった。これに対し、2021年の第1回共通テストでは80分の試験時間で総英単語数5,381語と大幅に増加。求められる1分あたり処理速度も67.3語と増加した。これは1989年比で2.47倍にあたる。さらに昨年、2022年の共通テストは80分5,850語で1分あたり処理速度は73.1語(1989年比2.67倍)、2023年は80分6,014語で同75.2語(同2.76倍)とますます増加傾向だ。

1989年の共通一次英語と2023年の共通テスト英語を比較すると、圧倒的な分量増がわかる

 英単語の語彙難易度についてみると、1989年の共通一次では筆記試験の英単語のうち67.1%が英検3級の初級レベルであり「ネイティブスピーカーが読む書物に置き換えると、小学5~6年生が読むチャプターブックスの難易度」だったと指摘。それに比べ、2023年の共通テストは英検3級・初級レベルの英単語が減り、「英検準1級レベルの難しい単語もあり、前後の文脈から推測をさせるものが出題されている」と斉藤氏。しかし「共通テストの出題者は過剰に難しい単語が含まれないよう精密に品質管理をしており、ここ数年は比較的テキスト・単語とも難易度が安定している」と分析した。リスニング試験についても、ここ数年は難易度が変わらないという。また、共通テストを外部試験と比較してみると、共通テストは英検に比べて分量が多く、単語の難易度は英検2級~準1級程度だとした。TOEICに比べると分量は少なく、単語も易しいと分析した。

共通一次の主要語彙が小学5~6年生レベルであったのに比べ、共通テスト英語は英検準1級も含む高難度

英検準1級レベルの語彙習得を

 これを踏まえて、3年目を迎えた共通テストは、「分量・難易度ともに安定した感があり、今後もおそらくこうした出題傾向が続くのでは」と予測。分量が多い背景として「英語でさまざまな情報を読んで認知・判断できるか、英語で読んで英語で反応できるかという力が問われている」と出題方針も交えて解説。対策としては「筆記試験・リスニングともに英検準1級相当の語彙を身に付けて、準備をしておけば良いのでは。スピードを鍛えることが重要で、英語を日本語に訳して考えていると間に合わない。本格的な英語適応能力を養成しておくことが有効」と語った。

外部試験および各大学の英語試験との難易度・語数の比較
「英語塾J PREP」で学び、大学受験英語に挑む

高校生の日常的な場面に即した出題

 次に登壇したJ PREP国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏は、共通テストの内容に踏み込んだ定性的な分析を紹介し、それに対応した英語勉強法を示した。

共通テスト英語の定性的な分析を行ったJ PREP国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏

 桂氏は、まず共通テストを取り巻く環境として、この度導入された新学習指導要領に学力の3要素として知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性が盛り込まれていることを取り上げ、「日本が今後目指していくべき学習の在り方を反映している」としたうえで「それを念頭に置いて問題を眺めると、より一層、傾向や今後必要となる対策が見えてくる」と語った。

 さらに、今年度の共通テストは「CEFRを参考にA1~B1レベル(英検3級~準1級の一部にあたる)に相当する問題」が作成されていると示した。続けて桂氏は、大学入試センターが示している問題作成方針における「実際のコミュニケーションを想定した明確な目的や場面、状況の設定を重視する」等の表記から、共通テストの大きな特徴として「日本の高校生が日常的に置かれている、具体的な場面に即した問いが出題される」と指摘した。

大学入試センターが公表している共通テストの問題作成方針(1)
大学入試センターが公表している共通テストの問題作成方針(2)

英語で情報収集し意見する習慣づくり

 そのうえで今年度の大学入学共通テスト英語を分析。リーディングは出題傾向・設問数・難易度とも昨年度と同じ、総語数も微増でほぼ昨年度と同じ傾向だったとした。桂氏は「すべての大問において、レポートやブログ、Webサイト、ニュースレター、記事等の日常的な場面が想定されているのが大きな特徴。高校生の生活の中にある具体的な場面が多く出ている」とし、これは「普段から英語で文献を読み、情報収集し、意見を発表してほしい、英語を使ってほしいという共通テストからのメッセージ」だと語った。

 また、リスニングについては、出題傾向・設問数・難易度・読み上げ語数ともに「昨年と大きく変わらない」とし、リーディングと同じようにリアルなコミュニケーションの場面が示され、大学の講義を想定したり、さまざまな国籍の学生による会話で多様なアクセントが使用されていたりするのが特徴だとした。また、今年度は読み上げ再生回数が1回読み・2回読みの併用だったものの、2025年度からはすべて1回読みになる可能性も検討されていると紹介した。

共通テスト英語リスニング、2025年度から再生回数に変化?

常にアウトプットを意識した英語学習を

 桂氏は3年分の共通テスト英語の問題から、共通テスト英語の特徴として、下記をあげた。

1.実生活・実社会におけるリアルなコミュニケーション英語であること
2.ディスカッションやディベート、プレゼンを模した出題
3.アメリカ・イギリス・英語母語話者以外の発音が混在していること

 そのうえで、共通テスト英語の3大キーワードとして、「実生活」に深く根差したものであること、「アウトプット」を非常に重視したものであること、英語や言語の「多様性」を重視したものであることとし、この3つを念頭において、英語学習を進めてほしいと解説。

 今後の英語勉強法に関しては、下記の3つのポイントを提示した。

1.英語を科目・教科としてとらえず、日常生活の1つのツールとして位置づける
2.常にアウトプットを意識した英語学習
3.文法問題こそないが、正しい英文法・語法の知識は従来通り必要であり、処理スピードを上げたり、いかに言葉として使いこなすかを考えたりする、先を見越した学習が重要

共通テストに備えた英語学習法の提案

図やグラフ等、注目すべき情報を取捨選択

 最後に登壇したJ PREP国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏は、「英語母語講師からみた大学入学共通テスト英語試験の特徴」と題して英語で講演し、イラストや表、グラフといった視覚情報に着目。そのうえで「英語そのものの理解だけでなく、非常に高速な情報処理が必要なこと」、「注目すべき情報と、無視しても良い情報を見分ける力が必要であること」を示し、共通テストの問題を例にあげ、具体的に解説した。

 たとえばセクション3Bの問いは、文化祭で英語クラブの催しとしてアドベンチャールームを作ることになり、参考としてホームアドベンチャーを作った人のブログを読んでいるという設定。設問では文章に基づいて出来事を順番に並べるよう求められているものの、問題の絵だけを見てしまうと間違った答えを導き出してしまいがちであるとし、「問題文と関連のない絵を意図的に使用し、間違いを誘発するトラップが潜んでいることもある」とMcCormack氏は指摘した。

J PREP国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏

リスニングがこれまで以上に重要になる

 さらにMcCormack氏はリーディングと同配点のリスニングにも注目。リーディングは80分100点の配点であるのに対し、リスニングは30分100点の配点で、解答時間のわりに得点の比重が高い。「読み上げ速度は普通だが、読み上げるのは1回のみのケースが多く、プレッシャーも大きい」と受験生の心理から分析した。そこで、正確な理解を深めるためには「聞いている内容だけでなく、配布されたテキストをヒントにすることが重要」とした。一方で、グラフ問題は難易度が高かったとし、「細部やビジュアルを見て混乱してしまう人もいるかもしれないが、まずは重要部分であるタイトルに注目してほしい」とアドバイス。「リスニングは今まで以上に重要で、毎日英語を聞くべき。通学中は英語で情報を得る絶好の機会であり、すべてを理解しなくても良い」とリスニングの重要性を強調した。

 McCormack氏はさらに、共通テストのリスニングでアメリカ・イギリス英語のみならず、多彩な話者がいる設定で異なるアクセントと発音の英語が出てきたことや、現実世界のさまざまな話題として、アジアゾウや反復学習、クマムシ等の幅広い内容の設問が出題されたことを例に「現実世界のさまざまなトピックを取り上げている」とし、生徒に対して日常的に広く社会への関心をもつことを促した。

諸外国のアクセントで展開される共通テスト英語

 最後に、全体的なまとめとして「問題は昨年と同レベルかやや易しい印象だが、リスニングはこれまで以上に重要になる。また、グラフ・写真などのビジュアルからヒントを得て迅速に情報処理することが求められ、取捨選択する力が求められる」と語った。

視覚情報含め、的確に情報を取捨選択する力が求められる

リスニングを用いて一読で意味を理解する

 最後に視聴者からの質疑応答が行われた。

 「一般的に共通テストの時間が足りないという声をよく聞く。原因や対策は?」との質問には、桂氏が「リスニングで時間不足になることはなく、リーディングで時間が足りなくなる。これは、リーディングの問題を繰り返し読まなければ理解できないのが原因であり、一読して英文の意味を把握することが大事。そのためには、リーディングの勉強の際にもリスニングをうまく活用して、音読やシャドーイングをしながら意味を理解できるように鍛えると効果がある」と回答した。

 また、「リスニング対策でお勧めの教材があれば教えてほしい」との質問には、斉藤氏が「効率的に英語を身に付けるには音素認識が重要。音素をきちんと認識するためには、英語の母音・子音を1つずつ区別して自分で発音できるような練習をする必要がある。英語の発音の基礎を身に付け、量をこなすこと。それをやっていないと日本語として英語の音をとらえてしまいがち」と英語学習における課題を示した。

 続けて「徐々に負荷を上げていくことが重要で、90%聞き取れる素材を選んで繰り返し聞いて95%、100%と上げていき、徐々に聞き取れる部分を増やしていくのが有効。J PREPでは毎週のメニューをこなしていれば、自然と段階的に力が付くように教材を編成しているが、周りにあるリソースを生かして学ぶ場合には、徐々にわかる領域を増やすことを心掛けてほしい」と丁寧に回答した。

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共通テストが求める「日常的に英語を使う次世代」の人材

 現在の共通テスト英語は、分量も難易度も保護者世代の入試英語とは明らかに異なり、戸惑う保護者も多いのではないだろうか。それはつまるところ、国や社会から子供たちへ発せられた「本当に世界で役立つ英語を身に付けてほしい」「英語を日常で使いこなせるようになってほしい」という期待でもある。共通テストが反映する、次世代のあるべき人材の姿は、多様な地域の人と、日常的に英語で話し、英語で学び、意見を表明する人材であり、その実現にはJ PREPによる本格的な英語適応能力の養成が一助となるだろう。

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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