eスポーツ英会話が導く「ゲーム×英語学習」の未来

 「エデュテインメント」「ゲーミフィケーション」の歴史や注目点、ゲシピが運営する「eスポーツ英会話」の利点について、ゲーム学習の研究や実践に携わる早稲田大学人間科学学術院教授の森田裕介先生に聞いた。

教育・受験 小学生
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 ゲームの要素を教育に活用することは現在、社会的にも注目が高まっている。その一方で、保護者の中には、その効果がどこまで期待できるのか、また悪影響はあるのかなどを気にされる方も多いだろう。

 昨今では、eスポーツ(ゲーム)を用いた英会話スクールも存在する。ゲシピが運営するオンライン英会話スクール「eスポーツ英会話」は、eスポーツを会話の舞台とし、100名以上のバイリンガルコーチと、英語でコミュニケーションを取りながらゲームをプレイする。そうした中で生徒は生きた英語に触れ、コーチや仲間とゲームで遊ぶほど、自信をもって話せるようになるという。

 今回は「エデュテインメント」「ゲーミフィケーション」の歴史や注目点、「eスポーツ英会話」に期待できることについて、ゲーム学習の研究や実践に携わる早稲田大学人間科学学術院教授の森田裕介氏に話を聞いた。

新学習指導要領を背景に注目が高まる「ゲーム学習」

--近年、エンターテインメントとして発達してきたゲームの手法を教育に取り入れる「エデュテインメント」や「ゲーミフィケーション」が注目されていますが、日本で注目されている背景を教えてください。

 私はゲーム学習の研究に10年くらい前から携わっていますので、実は「ようやくか」という思いでいます。とはいえ、このタイミングで注目をされるようになった背景を改めて考察すると、2017年、2018年にかけて改訂された学習指導要領が大きく関わっているとみています。

 学習指導要領は10年に一度の改訂があります。前の学習指導要領が出たタイミングで次の改訂に向けて動き出すため、その時点から…出たタイミングから逆算して10年前の時点から積み重ねてきた知見が盛り込まれるわけで、「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブ・ラーニングや、探究学習やプログラミング教育、STEAM教育は、こうして今回の教育指導要領に盛り込まれたのだといえます。

 子供たちが自ら能動的に関わっていくアクティブ・ラーニングでは、自発的な動機を促すためにゲームの要素が授業デザインに求められ、またみんなで協力しながら取り組む探究学習でもゲームの要素を取り入れて子供たちが参加しやすい授業デザインが導入されています。その流れから、継続して学びに取り組むために楽しさを取り入れた「エデュテインメント(エデュケーション×エンターテインメント)」が注目されるに至った、と見ています。

早稲田大学人間科学学術院教授の森田裕介氏

--「エデュテインメント」「ゲーミフィケーション」の世界的な潮流についてお聞かせください。

 海外では2010年あたりからゲーム学習が流行しました。私が2014年にアメリカのマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)に行ったときに、ホストとして迎えてくれたMITの教授も当たり前のようにゲーム学習の講演をしていました。日本はゲーム大国で、実は2000年代初頭からゲームの要素を取り入れた学びの機運が少しずつ醸成され、実際に取組みもありましたが、学校教育は受験指導が主流であり、ゲームに対してはネガティブなマインドがあって入りこむ余地がありませんでした。

 その一方で、アメリカの学校では当たり前にゲーム学習を用いている事例が報告されていました。タブレットを使って算数をゲームで学んだり、宿題もオンラインでゲーム感覚で取組めるよう工夫されていたりと、そこにネガティブな要素はありませんでした。世界的には、学習効果が期待できるのであれば、ゲームを柔軟に取り入れて、学びを進めようとしています。

 そうした中で日本の風潮が変わってきたのには、「TED Talks」で行われた「ゲームで築くより良い世界」(ジェーン・マクゴニガル)や、「脳とビデオゲーム」(ダフネ・バヴェリア)といった講演がきっかけになったと感じています。特に後者の講演によって、ゲームをやり続けると目が悪くなると言われていたがむしろ目は良くなる、判断力やさまざまなメディアから情報を吸収して処理する力が高まるといった、「エビデンス」が示されていたことが影響していると思うのです。

学習効果とゲーム要素

--ゲームと教育の親和性や学習効果についてお聞かせください。

 学習効果と言ったときは、何を測るかによって効果のありなしが変わってきます。日本でよく言われる学習効果は「学力」になろうかと思いますが、たとえば英語の学習を考えた場合、幼少期ならゲームを使って驚くほど英単語を覚える場合もあります。もちろんお子さんにもよるので一概には言えませんが、概してドリル学習系についてはゲームの要素で一定の効果があると考えられています。

 ゲームには、苦手意識を持つ前に興味関心を持たせるという効果があります。教育工学には、効果的に学習意欲を高めるアプローチとして「ARCSモデル」というものがあるのですが、ゲームの要素はこれに乗せやすいといえます。

 ARCSモデルの“A”はAttentionで、注意を引き付けることです。学校の授業で先生が最初に何か面白いものを提示して生徒の興味を引きつけてからはじめることは一般的に行われています。またそれが自ら学ぶきっかけにもなりえます。たとえば、歴史を好きになるきっかけにゲームをあげる方は多く、そこから社会科の学習意欲につながる場合もあります。ただし、この仮説は長期的に学習者を測定し続けることが難しいため、エビデンスが示されているわけではありません。今のところは、興味関心を喚起するきっかけになるというとことまではわかっている、ということです。

 ARCSモデルの“R”はRelevanceで自分との関連性です。たとえば自分がヒーローになりたいという要望がゲームの中でかなえられるのであれば、そのゲームや自分自身と関連しているといえます。また、ゲームで成功体験を得られれば、それによってARCSモデルでいうところの自信(Confidence の“C”)を持つことにつながりますし、何かを達成することで満足(Satisfactionの“S”)を得ることができます。ゲームにはこのARCSモデルにおける学習の動機を高める要素がありますので、うまくデザインすれば効果的な学びにつながると考えられます。

 またゲームの中では自分の能力が可視化され、即時にフィードバックされます。何かやったらすぐに答えが返ってきますし、失敗してももう一度チャレンジできます。自分の能力が少しずつ上がるゲームの場合は「足場かけ」という学習理論があてはまります。これは、授業の中で教師が適切なタイミングで行う「問いかけ」に似ています。また、いつまでも教師がサポートし続けるのではなく、生徒の習熟度に応じて徐々に消えていく(フェーディング)ことも大切だとされています。ゲームではこうした要素が、適切に配置されているものも数多くあります。

 このような要素をうまく組み合わせることで学習効果は期待できますし、実際にそれが証明されている論文もあります。

「学力」の中でもとりわけドリル学習で得られるものについては、ゲームの要素を取り入れることで一定の効果があるという

「eスポーツ英会話」で非認知能力を向上

--ゲシピの運営する「eスポーツ英会話」は、シューティングゲームやマインクラフトなどのゲームを英会話の講師と一緒にプレイしながら、片言でもいいので、英語で考え英語を使うことが苦ではない状態になることを目指します。ゲームと英会話の親和性についてはどのように見ていますか。

 英会話ではゼロベースではじめても、なんとなく覚えるフェーズがありますが、年齢によってはインプットをしておいて、それをアウトプットするフェーズが必要で、終わった後にもう一度、リフレクションすることも大切です。この語学習得の流れが、「eスポーツ英会話」ではゲームを楽しむ中で実現できると思います。

 年齢や語学レベルに合わせたコースがあるのも望ましいですね。「eスポーツ英会話」には今、少なくとも2つの軸、英語のレベルと発達のレベルがありますが、その子に適した形でどのように「足場かけ」をするかが、鍵になるでしょう。その子の能力に対して英会話のレベルが高すぎてもダメで、少し上のレベルを講師が見つけて伸ばせるかが英語力の向上には必要だからです。

 また実際の対人場面ではシャイになって話せなくても、ゲームだと話せる場合があります。その意味で「eスポーツ英会話」は多様なコミュニケーション力を育成できる可能性があります。「eスポーツ英会話」では、チームでコミュニケーションをとったり、自ら挑戦を促したりといった仕組みがありますので、学習者の動機づけを行ったり、非認知能力を育むことにつながると思います。

eスポーツ英会話って?
「語学習得に必要なインプット、アウトプット、リフレクションの一連の流れをゲームを楽しむ中で実現できる」(森田氏)

VUCAの時代に求められる力

--子供たちの今後を考えたとき、VUCAの時代と呼ばれる世の中において「エデュテインメント」「ゲーミフィケーション」で培った力はどのように生きてくると考えられますか。

 テストで測ることのできる、記憶をして再生する「認知」に関わる能力について考えた場合、ゲームでさまざまな情報を同時に処理する力は向上するので、学校の勉強でも効率良く学べるようになる可能性があります。また、家庭学習時にゲーミフィケーションされたものが入っていれば、子供は集中し個別最適な学びにアプローチできるという可能性もあります。

 問題は、継続するのがとても難しいということ。ただし、いろいろな人がお互いに励まし合って頑張る「ソーシャルゲームの要素」を取り入れることで、継続が期待できる場合もありますね。またキャラクターがかわいい、キャラクターを育てられるからなどのシンプルな要素で学習が継続する場合もあります。

 これから先のVUCAの時代で求められる力とは、そうした認知的な能力以外の「非認知能力」です。誰かから何かを教えてもらうのを待つ受け身の姿勢から脱却し、自らアクティブに学び、問題は何かを見つけて解決する、ないものを作り出す力です。そこに結び付くとされる協調性やコミュニケーションなどの、数値では測りにくい「非認知能力」については、米国シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授が有名な論文を出しています。彼は論文の中で、自分の心の動きを捉え、他者とのかかわりなどを円滑に進める「社会情動的な能力」、いわゆる非認知的な能力が必要だとしています。ユネスコも同様に今、こうした社会情動的な学びの重要性を訴えています。

 またこれからの社会では、挑戦し続ける力やコラボレーションも大切です。ネットゲームでは、コミュニケーションをとりつつコラボレーションしてひとつのことをやり遂げますが、これはプロジェクト学習と全く同じです。ですので、いま述べてきたような能力がゲームによって育まれるということは言えると思います。

 こうした側面から見ても、「eスポーツ英会話」は新しい取組みだと思います。動機付け・持続性・チームワークを、すでにエンターテインメントとして人気の高いシューティングゲームやマインクラフトなどの既存のゲームをプレイする中で実現し、プレイ中のコミュニケーションツールとして英会話を用いているからです。いろいろなタイプの子供が没頭できるようにデザインできれば、さらに発展するのではないでしょうか。

「これから先のVUCAの時代で求められる力は『非認知能力』」と言う森田氏

ゲームとの付き合い方も学びのひとつ

--2020(令和2)年に香川県で、いわゆる「ゲーム規制条例」が制定されたことが象徴的ですが、ゲームに没頭することが子供の成育には悪影響ではないかという見方をする保護者もまだまだ多いと思います。実際のところはどうなのでしょうか。

 賛否両論いろいろありますね。私自身も含めて、保護者の立場からすると、たしかに頭の痛い問題です。たとえば、テストや内申点などの学校で評価される指標から外れたものに子供が集中すると、大人の目には、大人の言う「本業」から時間が削られていると見えます。適度にやれば問題はありませんが、集中して1日の大半をそこに費やす子供を見ると、やはり大丈夫かと言いたくなってしまうんですね。

 「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、時間をどうコントロールできるかが問題なのです。子供に一切、ゲームに関わらせない方法はありますが、子供のコミュニケーションや社会性の育成を考えれば、あまり現実的ではありません。それならば、子供の頃からうまく付き合う方法を体得することも、これからに必要な学びのひとつだと思います。

--ゲームを教育に取り入れることに不安をおもちの保護者に対してメッセージをお願いします。

 ゲームが学びを阻害するものという考え方は、過去のものとなっています。最近は、アプリという名前でゲームの要素を取り入れた学習が実践され、その有効性が確認されています。また、ゲームやゲーミフィケーションを教育に取り入れることで、最近話題になっている非認知能力の育成につながることもわかってきています。

 子どもたちがゲームに興味を持つこと自体は、ごく自然なことです。やりたいという気持ちを無理に抑えつけると、かえって悪い影響を与えてしまうかもしれません。将来、研究者やエンジニアになるかもしれない子どもたちの可能性を信じて、ルールを決めて、節度ある生活の一部にしていくのも、ゲームとの付き合い方のひとつです。自身の教育観を押し付けるのではなく、予測不能な時代を生き抜く力を育むため、新しい時代にあった学びを保護者の皆さんも「探究」してみてはいかがでしょうか。

「時間をどうコントロールできるかが問題。ゲームとうまく付き合う方法を体得することもこれからに必要な学び」と語る森田氏

--ありがとうございました。


 森田先生のお話からは、ゲーム学習が受け入れられるようになった時代の変化を感じた。「教育工学を専門としてテクノロジーを数多く扱いますが、外してはいけないのはやはり“人間”とは何なのかという視点です」と森田先生がおっしゃる通り、「eスポーツ英会話」では、子供たちのモチベーションを第一に考えてサービスを展開している。好きからはじめる学びを、まずはお子さまと体験してみるのも良いだろう。

「eスポーツ英会話」について詳しく知る

 なお、2023年11月12日にJR原宿駅前のWITH HARAJUKU HALLにて開催する、未就学児~小学生を対象とした学びの体験イベント「リセマムキッズ文化祭」にゲシピの「eスポーツ英会話」も出展予定だ。無料で体験できるので、興味のある方は足を運んでみてほしい。


《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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