小中学校の電子黒板やタブレット端末活用例、文科省で模擬授業を実施

 文部科学省は3月13日、教育関係者を対象とした教育ICT活用実践発表会を開催した。文科省が実施している「学びのイノベーション事業」などにおけるこれまでの成果や取組内容が発表された。また、教育ICTを活用した指導案として2つの模擬授業も行われた。

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松阪市立三雲中学校の楠本誠教諭
  • 松阪市立三雲中学校の楠本誠教諭
  • デジタル教科書を電子黒板に表示
  • 授業の目標を電子黒板で共有
  • 作図の様子
  • 作図の様子
  • 横浜市立高田小学校の佐藤幸恵主幹教諭
  • デジタル教科書に線引きして解説
  • 紙の付箋も活用
 文部科学省は3月13日、教育関係者を対象とした教育ICT活用実践発表会を開催。文科省が実施している「学びのイノベーション事業」などにおけるこれまでの成果や取組み内容が発表された。また、教育ICTを活用した指導案として2つの模擬授業も行われた。

 模擬授業を行ったのは、三重県松阪市立三雲中学校の楠本誠教諭と横浜市立高田小学校の佐藤幸恵主幹教諭。楠本教諭は、電子黒板、iPad、デジタル教科書などを活用した理科の授業を中学3年生の生徒役として参加した他校の先生を相手に行った。

 授業は「力のつり合いと合成・分解」という単元で、恊働学習により3力の合力を作図することを目的とした内容。ひとり1台のiPadが与えられ、各自が前回の授業「2つの力の合力を作図しよう」の学習記録を閲覧することから始まった。その後は、デジタル教科書と学習記録をヒントに、班ごとに3力の合力を作図する作業に入った。

 班別の恊働学習では、1台のiPadはメモ用、1台は学習記録表示用、1台はワークシート記入用などとし、実際に作図するのは各班1台のタブレットとされていた。班の生徒は、1台のiPadを囲み、意見交換を行いながら作図していた。班ごとの作図が終わると、無線LANで電子黒板に送信し、各班の代表が作図方法を発表。班ごとの作図方法をクラス全体と共有することで作図方法が複数あることに気付くよう構成された授業だった。

 佐藤教諭の模擬授業は小学5年生の国語で、鳥獣戯画の解説文を書くという内容だった。鳥獣戯画に対する高畑勲氏の解説文を参考に、絵からどのような事実を読み取り、解釈し、表現するかを学習する単元となっている。

 授業では、まず電子黒板とデジタル教科書で学習履歴を確認した上で授業内容を説明。その後は、鳥獣戯画に対する解釈や事実を各班で共有し、ワークシートにまとめていくという作業を行っていた。班ごとのワークシートをクラス全体で共有する際は、ワークシートをスキャナー「ScanSnap」で取り込み、電子黒板で表示していた。

 2つの模擬授業では、ともに電子黒板とデジタル教科書を活用し、板書では難しい視覚的要素を効果的に活用していることが特徴的だった。対象学年や教科が異なることも影響してか、楠本教諭は生徒それぞれにiPadを持たせ、電子黒板とiPad双方でデータ通信を行うなど、比較的多くのICT機器や機能を活用していた。特に学習者端末連携ソフト「TabletSync」を活用することで、恊働学習の形態を「班から全体」から「全体から班」に瞬時に変更し、比較検討の機会を増やしていた。

 佐藤教諭は、鳥獣戯画と解説文を紹介する際にデジタル教科書と電子黒板を活用。絵と文章を行き来することができ、従来の教科書のように線引きができるデジタル教科書は便利だと話す。その一方で、子どもたちが実際に作業を行うワークシートは紙にするなど、子どもに合わせたICT機器の導入を行っているようだ。

 子どもたちが実際に記入したワークシートをスキャナーで取り込み、電子黒板で共有する作業も教育ICT導入のメリットだ。従来は、ワークシートを人数分コピーする必要があったため、クラス全体で共有するのは次回の授業という対応だったという。

 教育ICTを導入するに当たり、もっとも大切なのは子どもの学習の支えになるということだろう。ICT機器を活用するための授業ではなく、学習のサポートになる機能を利用をすること。今回の模擬授業では、ICT機器の長所を利用することが、授業の効率化、子どもたちの発見や学びの機会の増加などにつながっていたのではないだろうか。
《湯浅大資》

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