格安スマホが影響?小学生のスマホ保有、1年で急増し60%突破

 デジタルアーツ(DAJ)は3月1日、未成年の携帯電話・スマートフォン・インターネットの利用実態に関する最新調査結果を発表した。同日に都内で記者発表会を開催し、代表取締役の道具登志夫氏、管理部広報課課長の吉田明子氏らが登壇し、現状や分析結果の解説を行った。

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デジタルアーツ代表取締役社長の道具登志夫氏
  • デジタルアーツ代表取締役社長の道具登志夫氏
  • デジタルアーツ代表取締役社長の道具登志夫氏
  • デジタルアーツ管理部広報課課長の吉田明子氏
  • デジタルアーツ管理部広報課課長の吉田明子氏
  • デジタルアーツ経営企画部政策担当課長(チーフエバンジェリスト)の工藤陽介氏
  • デジタルアーツ経営企画部政策担当課長(チーフエバンジェリスト)の工藤陽介氏
  • スマホ使用有無と今後の使用意向(小学生)
  • スマホ使用有無と今後の使用意向(全体)
 デジタルアーツ(DAJ)は3月1日、未成年の携帯電話・スマートフォン・インターネットの利用実態に関する最新調査結果を発表した。あわせて同日に都内で記者発表会を開催し、代表取締役社長の道具登志夫氏、管理部広報課課長の吉田明子氏らが登壇し、現状や分析結果の解説を行った。

 この調査は、2011年12月から定期的に行っている「未成年の携帯電話・スマートフォン使用実態調査」の第10回目となる。今回の調査では、携帯電話・スマートフォンを所持する10歳~18歳男女(未成年者)618名、0歳~9歳の子どもを持つ保護者層579名、合計1,197名から回答を得た。調査期間は1月10日~1月16日。

 調査は「携帯電話・スマートフォンの所有率・利用時間・利用目的・利用アプリ」「フィルタリングの使用状況」「携帯電話・スマートフォンを使い始めたことによる変化」「ネットを使った小遣い稼ぎ」「リスクに対する考え方」など、さまざまな項目についてアンケートしたものとなっている。

◆「スマホで当たり前」時代? 格安スマホの影響

 記者発表会冒頭のあいさつで道具氏は、学校でのWi-Fi環境の整備、さらに2020年の学習指導要領の変化に言及し、「教育やITの変化の中で、このデータを活用してほしい」とした。この調査データは、政府も利用しているという。

 引き続き記者発表会では、吉田氏が登壇し、データの詳細について解説を行った。今回の調査によると、未成年者がスマートフォンを所有している割合は80.3%で、前回調査(2016年1月実施)の70.6%から9.7ポイント増加した。特に小学生の所有率が、60.2%(前回37.9%)と、前回より22.3ポイント急増した。

 この変化について吉田氏は、親がスマホ普及世代に移行し“(ケータイでなく)スマホで当たり前”になりつつあること、格安スマホが登場したことなどが理由ではないかと分析している。実際、今回の調査では、所有機種について初めて「格安スマホ」かどうかを質問。その結果、小学生の21.0%、中学生の13.0%、高校生の9.4%が格安スマホを所有・利用していた。低年齢に持たせるスマホとして、格安スマホが大きな選択肢となっていることが伺える。

 一方で、「フィルタリング」について聞くと、全体での使用率は53.9%(前回52.3%)にとどまるなど、スマホの伸びに比べて、ここ数年大きな変化がない。小学生は平均より低く51.0%で、前回から変化無し。1番高い女子高校生でも59.6%(前回54.1%)にとどまっており、吉田氏は懸念を示した。

◆伸びる利用時間、危機感薄く

 そのほかの、利用状況で目立った点としては、「女子高校生の利用時間の伸張(平均6時間を突破)」「高校生の4人に1人が、0~3時の深夜時間帯も利用」「『メルカリ』の利用が、小中では1桁台だが、高校生では30%越え。女子高校生に限ると49.5%にまで達する」「親の『LINE』の利用が、2015年1月の27.6%から、2017年1月には82.4%と、約3倍に急増」などがあげられた。

 また、利用増の弊害として、女子高校生では「頭痛等の体調不良になる回数が増えた」26.2%(前回14.6%)、「学校の成績が落ちてきたと注意された」20.4%(前回9.7%)など、体調不良・学業への悪影響も増加している。

 「ネット上でのお小遣い稼ぎの実態」としては、毎月平均収入は9,836円。手段としては、「ポイント交換」78.4%、「中古品の販売」18.8%、「LINEスタンプの作成」16.4%などがあげられた。LINEスタンプは前年の10倍ほどに伸びているが、これは初期制作必要数が40個から8個になるなど、参入の敷居が下がったことに寄ると、吉田氏は分析している。

 「最近のネットに関する事件で自分が当事者になりうると感じた事件」は、子ども全体では「特にない」が61.5%ともっとも高く、やや危機感に欠ける現状が明らかとなった。一方で「個人情報が漏洩する」25.6%、「アカウントを乗っ取られて悪用される」17.8%、「友達・知り合いの写真・動画をネットで勝手に投稿する」15.9%をあげる子どももいた。

 そのほか「タブレット利用経験」は小学生に多く、男子小学生27.2%、女子小学生33.0%。プログラミングの「興味あり」は全体の47.0%で、「経験あり」は全体の14.5%にとどまった。

◆情報モラル・リテラシーに警鐘…「禁止」路線にアドバイス

 発表会では続いて、経営企画部政策担当課長(チーフエバンジェリスト)の工藤陽介氏が登壇。調査結果の発表を踏まえ、フィルタリングの普及率から見た、これからの情報モラル教育とリテラシー教育のあり方について解説した。

 デジタルアーツも積極的に関与・協力しているセキュリティ教育だが、現在の課題は「“上手に使う”に焦点を当てていない活動の多さ」「“加害者・犯罪者にならない”という視点の不足」だという。

 まず、情報モラル教育において“上手に使う”ことに焦点を当てていないと「スマホは持たせない」「SNSは使わせない」「写真は投稿しない」など、禁止の方向性に進んでしまいがちだ。これについては、子どもたちによる主体的な議論、実機を使ったフィルタリング設定の実技などで、改善されるとのこと。

 そして“加害者・犯罪者にならない”ためには、モラル教育だけでなく、論理的な思考や技術力を育むことでも回避できるのでは、という考えを示した。

 デジタルアーツでは、今回の調査結果について「全般的にリスク対策における意識の低さが感じられる結果」と考察しており、今後の課題として、低年齢層の保護者に対する説明機会の創出、フィルタリングの理解促進をあげており、これらに注力する方針だ。
《冨岡晶》

冨岡晶

フリーの編集者/ライター/リサーチャー。芸能からセキュリティまで幅広く担当。

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