子どもの学習理解度、困窮世帯ほど低下傾向…大阪市実態調査

 経済的な困窮度が高い世帯ほど、子どもの学習理解度が低下する傾向にあることが4月13日、大阪市が公表した「子どもの生活に関する実態調査」の結果から明らかになった。困窮度は、医療機関の受診、朝食の摂取頻度、進路選択などとも密接に関係していた。

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大阪市 子どもの生活に関する実態調査報告について 困窮度別に見た学習理解度(小5・中2)
  • 大阪市 子どもの生活に関する実態調査報告について 困窮度別に見た学習理解度(小5・中2)
  • 大阪市の困窮度別人口 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 家計状況 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 世帯構成別に見た家計状況 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 困窮度別に見た子どもについて経済的な理由による経験 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 困窮度別に見た経済的な理由による経験 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 困窮度別に見た初めて親となった年齢(母親) 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
  • 困窮度別に見た保護者と子どもの関わり(おうちの大人と朝食を食べるか) 大阪市「子どもの生活に関する実態調査報告について」 
 経済的な困窮度が高い世帯ほど、子どもの学習理解度が低下する傾向にあることが4月13日、大阪市が公表した「子どもの生活に関する実態調査」の結果から明らかになった。困窮度は、医療機関の受診、朝食の摂取頻度、進路選択などとも密接に関係していた。

 「子どもの生活に関する実態調査」は平成28年6月27日~7月14日、大阪市立小学校の全5年生、大阪市立中学校の全2年生、大阪市内の認定こども園・幼稚園・保育所の全5歳児とそれぞれの保護者を対象に実施。有効回答数は70,532人。

 調査では多面的に貧困を測る指標として、「等価可処分所得」とそれをもとに区分した「困窮度」を用いている。等価可処分所得とは、世帯の可処分所得(収入から税金や社会保険料を引いた実質手取り分の収入)を世帯人数の平方根で割った額。国民生活基礎調査における相対的貧困率は、一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない人の割合をいう。中央値から降順に困窮度III、困窮度II、困窮度Iと示す。

 国の定める基準に照らすと、大阪市の相対的貧困率(困窮度I)は小5・中2のいる世帯で15.2%、5歳児のいる世帯で11.8%。前年1年間の家計状況について、「貯蓄ができている」は小5・中2のいる世帯で30.1%、5歳児のいる世帯で34.6%、「赤字である」は小5・中2のいる世帯で28.3%、5歳児のいる世帯で25.4%だった。

 世帯構成別にみると、小5・中2のいる世帯において「貯蓄ができている」と回答したのは、「ふたり親世帯」34.7%に対し、「母子世帯」は15.0%。「赤字である」と回答したのは、「ふたり親世帯」25.3%に対し、「母子世帯」は39.7%にのぼった。

 経済的な理由でできなかった経験を困窮度別にみると、困窮度が高くなるにつれ、該当数が多くなる傾向にあった。困窮度がもっとも高い「困窮度I」では、小5・中2のいる世帯で「子どもの誕生日を祝えなかった」が5.3%と、中央値以上群の17.7倍。回答率がもっとも高かったのは「家族旅行(テーマパークなど日帰りのおでかけを含む)ができなかった」が42.2%だった。5歳児のいる世帯で「子どもを医療機関に受診させることができなかった」は2.8%と、中央値以上群の14.0倍であった。

 また、母親回答者を対象に困窮度別に初めて親になった年齢をみると、困窮度が高まるにつれ、10代で初めて親になったと答えた割合が高くなっていた。

 保護者と子どものかかわりでは、「おうちの大人と朝食を食べるか」との問いに「ほとんど毎日」と回答した子どもは、困窮度が高まるにつれて減少するとともに、「まったくない」と回答した子どもは増加する傾向がみられた。「困窮度I」に限ると、「まったくない」17.8%、「ほとんどない」17.5%だった。

 5歳児の保護者を対象に「生活リズム(早寝・早起き・朝ごはんなど)を整える」「(絵)本を読み聞かせる」「文字や簡単な計算を教える」など、しつけについてたずねた結果でも、困窮度が高いほど回答する割合が少なくなっていた。

 学習理解度は、困窮度が高まるにつれて「ほとんどわからない」と回答した子どもが増加。希望する進学先では、困窮度が高まるにつれ、子ども、保護者ともに「高校」「専門学校」と回答する割合が多かった。「困窮度I」の保護者が子どもの進学達成を希望しない理由は、「経済的な余裕がないから」が64.8%を占めた。

 大阪市では、「今回、実態調査の詳細な分析結果をとりまとめ、世帯の経済状況が、子どもの生活や学習環境、子どもの学習理解度に影響を与えていることや、ひとり親家庭の経済状況が厳しいこと、若年出産の世帯が貧困に陥るリスクが高いことなどが確認された」とコメント。今後は、分析結果をもとに課題解決に向けた方針を決定し、具体的な施策や事業を検討していくという。
《奥山直美》

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