クローズドな学習環境を実現「FUJITSU 文教ソリューション デジタルラーニング」…グローバルリーダーの育成に活用

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一般財団法人富士通JAIMS 理事 兼 所長 井口久美子氏
  • 一般財団法人富士通JAIMS 理事 兼 所長 井口久美子氏
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  • 「FUJITSU 文教ソリューション デジタルラーニング」がめざす学びのイメージ
 知識創造理論の世界的権威である、一橋大学名誉教授 野中郁次郎氏のビジョンを具現化し、一般財団法人富士通JAIMS(以下、富士通JAIMS/ジェイムス)が開発したのが国際マネジメントプログラム「GLIK(Global Leaders for Innovation and Knowledge/グリック)」だ。「GLIK」参加者に向け、富士通JAIMSが2017年より「デジタルラーニングプラットフォーム Fisdom(フィズダム)」を導入した。 

 富士通は2016年にJMOOC公認プラットフォームとして「Fisdom」を開設しMOOCサービスを提供してきた。2017年度からは同一プラットフォーム上で動作する、大学やその他教育機関個別のクローズドな学習環境を提供するSPOC(Small Private Online Course)サービスとして「FUJITSU 文教ソリューション デジタルラーニング」の販売を開始。その第一号ユーザーとなった富士通JAIMS所長・井口久美子氏に、「デジタルラーニング」をグローバルな人材育成プログラム「GLIK」に活用した背景や、取組みについて話を聞いた。

◆イノベーションをおこせる日本とアジアのビジネスリーダーの育成が富士通JAIMSの使命

「GLIK」のビジョンは、イノベーションをおこし、世界を牽引するリーダーを育成すること、そして、そのリーダーたちが、アジア各国から集まった参加者、訪問国で出会う講師、有識者などとの対話を通じて、地域固有のナレッジを縦横無尽につなぐことで、より善い未来を目指してコミュニティを創造していくことだ。

井口氏:富士通JAIMSの活動の目的は、企業や公的機関を問わず組織のよきグローバルリーダーを育てることです。求められるのは、広い視点、観点で社会の「共通善」をとらえ、より善い世界にするプランを立案し、実践できる能力だと思っています。

 2012年、新興市場からのニーズの高まりを受け、アジア太平洋地域のビジネスパーソンを対象として、富士通JAIMSを日本に設立しました。富士通は「ICTでイノベーションをおこし豊かな未来を創る」ということをミッションとして活動しています。ICTは単なるツールでしかないので、それを使う人間を、変革(=イノベーション)をおこせる人材に育てなければならない。富士通JAIMSはアジアパシフィック地域の人材開発をミッションに掲げながら、イノベーションをおこせる人を育成し、その人をつなげることで、富士通のミッション実現を下支えしています

「GLIK」2017年度春期コースのようす
「GLIK」2017年度春期コースのようす

◆デジタルラーニング導入の背景…3.5か月のプログラムをより深い経験にするために、教養・知識レベルの「ギャップ」を事前に埋める

--「GLIK」では、実際にどのような研修を受けるのでしょうか。

井口氏:「GLIK」が目指すのは社会にとって何が善いことなのか、物事の本質を見極めたうえでのイノベーションをおこせる人材を育てることです。社会はさまざまな文化・価値観を持っており、また取り巻く環境は都度変化しているので、善いことは一義的ではありません。それを見極める能力はグローバルで活動するリーダーに不可欠なスキルなのです。「GLIK」はナレッジイノベーションのプロセスとリーダーのあり方を、理論と実践を通じて学ばせることが特徴です。実践の特徴となるのは、各自が設定した課題解決にむけたイノベーションモデルを創造する「キャップストーンプロジェクト」と、イノベーションがおきた場所に行き、実際にイノベーションをおこしたリーダーと対話をする「サイトビジット」です。

 まずは3.5か月間、日本、米国(ハワイ)、タイ、シンガポールの4か国を移動しながら、理論と実践の両方を学んでいきます。日本では主として経営理論、ハワイでは教養と方法論を学びます。その後、実践のためにシンガポールとタイへ回り、イノベーションを行った事例を学びます。

--濃密な3.5か月間ですね。その事前学習に「デジタルラーニング」を導入した最大の理由は?

井口氏:短期間のプログラムなのでかなり凝縮していて、非常にインテンシブである、ということが導入の背景にありました。単なる座学ではないので、「GLIK」での学びの深さは、コンテンツの中身と参加者の質で決まると思っています。さまざまな国の人同士の知識交流を通じてリーダーシップや多様な考え方に接するためには、参加者にも教養や一定の知識レベルが求められます。英語力もそのひとつですが、さらに期間中に自分でイノベーションをおこすプロジェクトを考えてもらうキャップストーンプロジェクトにきちんと対応するために、自分の国やコミュニティの状況、課題の本質などを事前に調査して理解を深めておく必要があります。しかし、現実的にはホームページの解説を読んだだけで、十分に準備をしてこない参加者も少なからずいました。

「GLIK」オンライン事前学習画面イメージ
「GLIK」オンライン事前学習画面イメージ

 「Fisdom」によるオンラインの事前学習の導入は、このギャップを埋めることが目的でした。「GLIK」の目的、マネジメント・イノベーション、共通善の定義など、プログラムの基本にかかわる要素の理解、キャップストーンプロジェクトの課題設定のための予備知識などを自習してもらう教材を用意して、研修初日まで受講してもらうようにしました。

◆短期間導入+クラウドサービス+日英対応…必要な要素がすべて備わっていた「Fisdom」

--オンライン学習教材やMOOCプラットフォームが数ある中で「Fisdom」を選んだポイントは?

井口氏:いろいろありますが、やはりクラウドサービスであることがひとつの要因です。「GLIK」の特性上、1回の実施から次の研修までの準備期間は2か月半ほどしかありません。よって、まず第一に重視したのが導入期間の短さです。システムのインストールや構築に時間と手間はかけられません。クラウドサービスのように、すぐに導入できるものである必要がありました。実際に導入を決めて契約をしてから運用開始までは、約7週間でした。学習コンテンツの制作時間は除きますが、コンテンツを渡してからおよそ1か月後には参加者向けの講座を開講できました。

 クラウドサービスなので初期投資も抑えることができましたし、20人程度の小規模クラスでも問題なく導入可能な点も評価しました。また、「GLIK」はグローバルな研修であるため、日本語と英語に対応した画面が用意されているのも重要なポイントです。

◆初日から積極的に取り組み、深い議論に発展…デジタルラーニングによる事前学習の効果

井口氏:導入してから最初の研修が終わったばかりなので、最終的な効果についてはっきりしたことは言えませんが、参加者の準備不足や研修に対する理解度のギャップが改善されたと思っています。

 まず、「GLIK」において「共通善」とは何かを理解しておくことが重要で、これからのリーダーには欠かせない要素です。多くの参加者が事前に「Fisdom」で知識を得て、自分なりの共通善を考えてプログラムに臨みました。プログラム初日には、共通善のワークショップを実施して各自の考える共通善について議論と共有を行うのですが、その場ですぐに深い議論につながっていました。事前学習によって、初日のワークショップで学びの深堀りを早めにできたと思います。

一般財団法人富士通JAIMS 理事 兼 所長 井口久美子氏
一般財団法人富士通JAIMS 理事 兼 所長 井口久美子氏

 課題設定やそのプロセスの予備知識が得られたため、開講前に自分の課題に関連する場所を訪れて予習する参加者がいました。積極的に課題に取り組む者が増え、結果としてキャップストーンプロジェクトの成果の質もあがったと思います。受講者の視聴履歴もわかるので、未受講者への督促も可能になり、準備が不十分な参加者が減りました。基本部分の理解が進んでいるので、研修そのものも時間効率が上がり、議論や討議に多くの時間が割けるようになったのも効果のひとつです。

 事前学習、オリエンテーションのコンテンツから、プログラムディレクターの熱意や想いを映像を通じて感じ取り、実際の研修でのモチベーションにもつながっていました。また、コンテンツも実際の研修もすべて英語で行われるのですが、英語があまり得意でない日本人の参加者にとって、オリエンテーションのコンテンツを繰り返し視聴できるのも喜ばれました

--まだ1回目の利用とのことですが、すでに「デジタルラーニング」による事前学習の効果はあったようですね。

◆一般向け公開講座や卒業生向けの講座…「GLIK」のデジタルラーニングコンテンツを国内外に発信

--「GLIK」では今後どのような「デジタルラーニング」による学習の展開を考えているのでしょうか。

井口氏:コンテンツはもっと充実させていきたいですね。今回は受講前のオリエンテーションが主な目的で導入しましたが、今後は、補助講義的な学習コンテンツを増やしたいと思っています。たとえば、英語があまり得意でない人向けに、英語でのコミュニケーション能力を高めるコースや、財務諸表を読めるように簿記や会計に関するコースも面白いかもしれません。知識やスキルの平準化という視点では、「GLIK」で重要なマネジメントに関する知識を学習できるコンテンツも考えられます。

 研修で課される課題を「Fisdom」のディスカッションボードを利用して参加者間で討議、ナレッジエクスチェンジができると良いと思います。参加者のチームワークの醸成に役立てたり、チームワークそのものを学んだりすることも可能かもしれません。

「FUJITSU 文教ソリューション デジタルラーニング」がめざす学びのイメージ

 「Fisdom」はMOOCとSPOCを併用できるプラットフォームなので、MOOCを活用した一般向けの公開講座を提供してもいいですね。「GLIK」参加者向けの講座と一般公開される講義との作り分けは必要になりますが、「GLIK」の良さを多くの人に知ってもらうためのリクルーティングや社会貢献のための公開講座があってもよいと思います。

 さらに、卒業生の中には、キャップストーンプロジェクトで考えた施策、アクションプランを本国に持ち帰って、実際のプロジェクトとしてスタートさせる人もいます。そのような具体的な成果をまとめたコンテンツを、卒業生や一般の人に発表する場として「Fisdom」を利用できないかと考えています。

--なるほど。「Fisdom」の活用場面はまだまだ拡がりそうですね。

◆「GLIK」で養われた視点・観点を生かし、課題解決に向けて自国で実践してほしい

--最後に、各国の「GLIK」参加者に期待することをお聞かせください。

井口氏:「GLIK」には、 おもに日本、ハワイ、東南アジア、東アジアの19の国と地域の方々が参加しており、富士通奨学金制度を利用する人たちも含まれています。これまでの参加者は、24歳から49歳、平均年齢は32歳です。参加者の業種は、製造業、金融機関、IT関係などの民間企業に加えて、各国の官公庁、自治体や教育機関、また政府高官を派遣させる国もあり、国も業種も多種多様です。

富士通奨学金プログラム修了証書授与式後に、富士通株式会社 田中社長を囲んで
富士通奨学金プログラム修了証書授与式後に、富士通株式会社 田中社長を囲んで

 いろいろな視点・観点を学べたという声を聞きます。共通善を根とする「GLIK」を通じて、自分の幸せ、社会をどうしたら幸せにできるかを、あらためて考えたという声や、また、3.5ヶ月4か国をずっと一緒に回った参加者と生涯を通じて続くネットワークが財産だという声があります。

 「GLIK」で終わりではなく、各国へ帰ってそれ以上の経験をしてほしい、というのが我々の願いです。

--これからの展開が楽しみです。本日はありがとうございました。

 「GLIK」の参加者は、年々若い世代や女性の参加者も増えてきているという。日本だけでなく世界各国からオンラインで学習し、ナレッジエクスチェンジができるプラットフォーム「Fisdom」は、富士通のミッション「ICTでイノベーションをおこし豊かな未来を創る」を実現するため、より善い社会を担う先駆者の発掘、グローバル人材の育成に無限の可能性を備えている。富士通JAIMSが育成したリーダーたちが、富士通グループが誇るICTを活用し、日本やアジア各国で新しいイノベーションを実現していく。ICTで変わり、拡がる、より善い未来が楽しみだ。

提供:富士通
《中尾真二》

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