プログラミング教室・スクールの選び方、子どものタイプ別10コースを診断

 迷いがちなプログラミング、IT系の習い事。LITALICOワンダー サービス開発Gで活躍中の和田沙央里氏に、プログラミング教室やIT系習い事を大きく3グループ・10コースに分け、一般的にどのような種類のコースがあるのか紹介してもらった。

教育ICT 小学生
<3グループ10コース別>プログラミング・IT系習い事
  • <3グループ10コース別>プログラミング・IT系習い事
  • スクールの期間・形式による分類
  • 写真はIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」でのようす
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  • 写真はIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」でのようす
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  • LITALICOワンダー サービス開発G 和田沙央里氏。LITALICOワンダーでは「さおりん」と呼ばれ、子どもたちから親しまれている。
 2020年に小学校で「プログラミング教育」が必修化されることになり、子どもの習い事としての「プログラミング教室」という選択肢を耳にすることも徐々に増えてきました。

 インターネットで子ども向けのプログラミング教室を検索すると、たくさんのスクールやコースが出てきます。ゲーム、ロボット、Webプログラミング、マインクラフト、動画制作…と、その幅広さに戸惑う保護者さまも多いのではないでしょうか。

 今回は、そんな迷いがちなプログラミング、IT系の習い事を大きく3グループ・10コースに分け、一般的にどのような種類のコースがあるのかをご紹介します。

プログラミング教室って何?コースや種類



 「プログラミング」とは、コンピュータに指示を出して人間の思い描いた働きをさせる方法のことです。プログラミングは、プログラマやエンジニアなどの専門職がプログラミングの技術を扱うのはもちろんですが、そのほかの職業でも扱うことはあります。たとえば、一般企業の情報システム課へ配属された、業務効率化でシステム導入することになったなど、身の回りのIT化が進むとそのようなことも増えるでしょう(編集部補足:和田沙央里氏によるプログラミングに関する基本知識解説)。

 最近は子どもの習い事としての「プログラミング教室」という選択肢を耳にすることも、徐々に増えてきました。どういった種類やコースがあるのか、また、どういったお子さまにあっているのかを解説します。

A:やりたいことが決まっていない子向け4コース
B:学びたいことが決まっている子向け4コース
C:好きなことを極める表現制作2コース


<3グループ10コース別>プログラミング・IT系習い事
プログラミング・IT系習い事マップ

A<はじめてグループ>やりたいことが決まっていない子へ


 パソコン操作に慣れていなくても始められるビジュアルプログラミング言語やブロックを組み立ててロボットの仕組みをつくるコースなど、身近で始めやすいのが<はじめてグループ>の特徴です。専門技術だけでなく、論理的・創造的に考える力や試行錯誤を通して学ぶ力を目標としているスクールもあります。

(1)タブレットプログラミングコース
 Viscuit(ビスケット)やScratchJr(スクラッチジュニア)、Pyonkee(ぴょんキー)など、iPadやタブレットを使用してゲームや絵本をつくります。低学年、未就学からも始めやすいものが多いです。

(2)Scratchプログラミングコース
 子ども向けのプログラミング教室でよく使われています。MITメディアラボが開発した「Scratch(スクラッチ)」を使用して、ゲーム、アニメーション、アート、音楽などパソコンのマウス操作を中心にさまざまな表現制作を行い、プログラミングの基本的概念を学びます。

(3)ブロック型ロボットコース
 ブロックを組み立ててロボットの仕組みをつくり、ビジュアルプログラミングで制御します。「レゴ マインドストーム EV3」のように、国内外で大会が開催されるような知名度を持つロボット教材もあります。また、ビジュアルプログラミング言語ではなく、テキスト言語で制御を行うコースやスクールもあります。

(4)マインクラフトプログラミングコース
 子どもたちに大人気のゲーム「Minecraft(マインクラフト)」を通して、プログラミングの考え方を体験するコースです。「Mod(モッド)」と呼ばれる、ゲームを改造するためのファイルを開発するコースやスクールもあります。


B<専門グループ>学びたいのはこれだ!目的が決まっている子へ


 3Dゲームをつくるためのプログラミングを学びたい、iPhoneのアプリをつくりたい、パソコンを組み立ててみたい、など、目的が決まっていて、お子さま自身が学ぶための準備ができている場合は<専門グループ>がよいでしょう。初心者向けから上級者向けまで、難易度はさまざまです。

(5)ゲーム開発コース
 JavaScript(ジャバスクリプト)、C#(シーシャープ)などのプログラミング言語を使用して、2D・3Dゲームを開発するコースです。コーディング技術が必要になります。

(6)アプリ開発コース
 iOSやAndroidのアプリを開発するコースです。コーディング技術が必要になります。ゲーム以外のツールのようなアプリケーションを自分で考え、形にすることができます。

(7)Web制作コース
 WebページやWebアプリ・サービスをつくるコースです。コーディング技術が必要になります。抽象的な考えや設計が必要になるため小学校高学年・中高生以上を対象とするスクールが多いです。

(8)電子工作・マイコンボードコース
 小型の電子基板が組み込まれたロボットやコンピューターで電子回路等を学ぶコースです。組み立てたコンピューターでプログラミングを学ぶ、初心者向けのコース・スクールもあります。


C<IT表現グループ>プログラミングにこだわらず、好きなことを極める


 YouTube、LINEクリエイターズスタンプなど、お子さまの身近にあるパソコンやスマートフォンを活用した表現手段や、3Dプリンタを使ったものづくりなど、最先端の技術に触れるようなコースがあります。プログラミングに関係しないものもありますが、新しい技術を学ぶ力、創造力、デザインなどを目標としているスクールもあります。

(9)動画・音楽・グラフィック編集コース
 実況動画、音楽、LINEスタンプなどを制作・編集するコースです。プログラミングと直接関わりがないコースもありますが、編集ソフトを使用し、ITを使って創造表現することができます。

(10)3Dモデリングコース
 パソコンのモデリングソフトを使って、3Dモデリングをするコースです。3DCGを制作するコース、3Dプリンタで出力するデータを制作するコースなどがあります。3Dゲームをつくる場合や電子工作のパーツをつくる場合など、プログラミングにつながる分野もあります。

デジタルか?ものづくりか?



 大きく分けてどのグループがお子さまの現状に合っているか確認したら、次はどのコース内容にするかを検討していきましょう。内容は、ゲーム制作、アプリ開発などのパソコンの画面上だけで完結するものとロボット、マイコンボードといった現実世界のものを制御するものといった2つに分けられます。

 「ゲームづくりとロボット、どちらから始めたらいいの?」という声をよく聞きますが、プログラミングの考え方や創造的・論理的思考などどちらにも共通する学びが多いため、LITALICOワンダーでは「お子さまの興味関心が強くて、お子さまが得意な方」とお答えしています。

 6歳から7歳以下のお子さまの場合は、発達段階として抽象度の高い思考、たとえば演算子を使った複雑な条件分岐、論理演算などが難しい時期なので、ロボットのように目の前の実物をプログラミングで動かすコースから始めることをおすすめすることがあります。画面上だけで完結するプログラミングでも、パソコンではなくiPadやタブレットを使うコースだと慣れ親しみやすいでしょう。

 ただし、同じ年齢でも空間認知の力よりも言語的な力の方が強いお子さまもいらっしゃいますので、実際に体験してみて、よりお子さまが主体的に取り組んでいると感じる方を選ぶといいかと思います。

 また、プログラミングやものづくりの技術は互いに関連性のあるものが多いです。ひとつのコースだけなく、複数のコースに取り組むことも、お子さまの成長の可能性を広げる機会になるでしょう。

スクールの期間・形式を確認!



 そのほか、スクールの違いは「学習スタイル」と「通う期間」によって4つのタイプに分類できます。それぞれの特性を生かして、ご自宅からの距離やお子さまに合った学習スタイルを選びましょう。保護者の皆さまにとっては、授業参観ができるか、定期的な成果発表会があるかなどもチェックポイントのひとつです。

スクールの期間・形式による分類
スクールの期間・形式による分類

【長期】通塾/一斉レッスン型


 学年や通塾暦によってクラス編成され、習得するスキルが決められており、カリキュラムに沿って着実にステップアップしていくタイプのスクールです。決められた回数を受講したら修了という形になります。偏りなく学習することができます。

【長期】通塾/寺子屋型


 お子さまのつくりたいもの、学びたいことベースに目標を立て、ひとりひとりが個別の課題に取り組むタイプのスクールです。わからないことがあったら講師に聞きながら進めることができます。興味あることを追求して自分のペースで学習することができます。

【単発・短期】ワークショップ型・キャンプ型


 夏休みなどの長期休暇に多く開催され、近くに通塾型のスクールがない方や長期での参加が難しい方も利用できるタイプです。興味がある分野についてお試し感覚で参加したり、自由研究などに活用することもできます。

【長期】通信・オンライン型


 近くに通えるスクールやワークショップがないという方や自宅でコツコツ学ぶのが得意なお子さまにはオンライン型もあります。毎月教材などが送られ、課題を提出するタイプです。

子どもたちに将来必要な力…自ら選び、自ら学んでいくこと



 たくさんの選択肢がある中で、保護者が習わせたいものとお子さまがやってみたいものが一致しないこともあるかと思います。ご家庭の方針もありますが、意見が異なった場合は、何を目的としてプログラミング教室に通わせたいのか、また、通いたいのかをお互いに考えてみてもよいかもしれません。

 不確実な未来を生きる子どもたちに必要な力は、必要な情報を選び取り、自分自身で人生を切り開いていくこと。そう考えると、習い事をお子さま自身の意志で選ぶことが、お子さまの自己決定を促し、自ら学ぶ力を育む機会になると私たちは考えています。

LITALICOワンダー サービス開発G 和田沙央里(わだ さおり)
広島県生まれ。神戸大学発達科学部にて発達心理学・教育心理学を専攻し、卒業後は都内の大手IT企業で金融系基幹システムの開発に携わる。2014年に株式会社LITALICOに入社。開設当初のIT×ものづくり教室LITALICOワンダーでゲーム&アプリプログラミングコースのカリキュラム・授業設計を統括する。2016年度は総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業のプロジェクト責任者を務めた。自宅でWebサイトのつくりかたを独学で学び、コンピューターを使ってゼロから何かをつくり、世界へ発信することの面白さを子どものころに体験した。
《和田沙央里》

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