注目のキーワード「SDGs」とは?子どもたちへの影響と先駆例

 教育業界で話題のキーワードがふたつある。ひとつは「大学入試改革」。もうひとつのキーワードは「SDGs」。世界を変革するため、国連開発計画(UNDP)が示した17の指標だ。基本知識と学校への影響をまとめる。

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持続可能な開発目標(SDGs) 17の目標
  • 持続可能な開発目標(SDGs) 17の目標
  • 持続可能な開発目標(SDGs)の詳細
  • 前身のMDGsとSDGsの比較
  • 第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞団体
 教育業界で話題のキーワードに「SDGs」がある。世界を変革するため、国連開発計画(UNDP)が示した17の指標だ。

 今回はこの「SDGs」について、どういった目標が示されており、学校教育現場に、そして子どもたちにどのような影響を与えているのか見てみよう。

SDGsとは



 「SDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)」は「Sustainable Development Goals」の略。通称「グローバルゴールズ」。2016年1月から2030年まで、15年間にわたり掲げられる国際目標で、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されている。

 持続可能な世界を実現するための17のゴール169のターゲット232の指標から構成されており、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている点が特長。

 発展途上国だけでなく、先進国が普遍的に取り組むべき目標であることから、日本でも政府や企業、団体がさまざまな取組みを展開している。

17のゴール



 2030年を年限に掲げられる17の国際目標は次のとおり。

17の開発目標
貧困/飢餓/保健/教育/ジェンダー/水・衛生/エネルギー/成長・雇用/イノベーション/不平等/都市/生産・消費/気候変動/海洋資源/陸上資源/平和/実施手段


 子どもに大きく関わる内容としては、貧困をなくすことのほか、「質の高い教育をみんなに」実現すること、安全な水とトイレを世界中に整備することなどが掲げられている。

持続可能な開発目標(SDGs)の詳細
持続可能な開発目標(SDGs)の詳細

 これら17の国際目標の実現には、「先進国を含めすべての国が行動」し(普遍性)、「誰一人取り残さ」ず(包括性)、すべてのステークホルダー(関係者)が実現に向けて主体的に参加することが求められる(参加型)。資金や技術など、実現に向けた実施手段も重視されることから、社会・経済・環境のすべてが連携し(統合性)、評価の結果を踏まえた定期的な見直しを行いながら活動しなければならない(透明性と説明責任)。

 なお、SDGsの前身にあたる「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」では、「貧困・飢餓」「初等教育」「女性」「乳幼児」「妊産婦」「疾病」「環境」「連帯」の8目標だった。

日本とSDGs



 国際目標であるSDGsが誕生して以来、日本は政府を主導にSDGs実施に向けた会議や推進本部の設置に取り組んできた。現在は日本の「SDGs」モデルを実現すべく、SDGs推進本部第4回会合で決定された「SDGsアクションプラン」に基づく活動を展開している。

 日本の「SDGs」モデルを具体化するために、日本が注力する取組みは「あらゆる人々の活躍の推進」「健康・長寿の達成」「成長試乗の創出、地域活性化、科学技術イノベーション」「持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備」「省エネ・再エネ、気候変動対策、循環型社会」「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」「平和と安全・安心社会の実現」「SDGs実施推進の体勢と手段」の8つ。他分野を横断する取組みの中には、子どもの不慮の事故や性被害の防止、次世代の教育振興などが含まれている。

教育機関とSDGs



 近年では、SDGsに掲げられる17のゴールをテーマにしたワークショップや子ども向けイベントが増加傾向にある。課外学習や校内イベントの一環として、SDGsについて学ぼうとする学校・教育団体も見られるようになってきた。なかにはSDGsを主とした教育計画やカリキュラムを作成し、児童生徒・学生や地域を巻き込んだ“SDGs推進拠点”として活動する学校もある。

 たとえば、金沢工業大学はSDGsの達成に向け、扇が丘・白山麓・虎ノ門の3キャンパスにSDGs推進拠点を設置。SDGsに特化した通年カリキュラムを導入しているという。周辺の自治体と連携した地域課題解決のための教育・研究にも取り組み、地方創生や海外における課題解決にも貢献しているそうだ。

 東京都江東区立八名川小学校も、SDGs推進に取り組む教育機関のひとつ。「環境・多文化理解・人権・学習スキル」という視点から、すべての教科・領域の学習を統合的かつ横断的につなぐ「ESDカレンダー」や「SDGs実践計画表」を作成し、学習指導要領のカリキュラムに即した実施および普及に力を入れている。なお、「ESD」とは、「Education for Sustainable Development」の略。「持続可能な開発のための教育」を指す。2018年には「ESD推進の手引」の改訂版が公開されている。

 学長のリーダーシップのもと、SDGs達成の観点を採り入れた大学運営を進めている大学は岡山大学だ。学術的な研究はもちろん、社会課題を発見・解決する実践力を持つグローバル人材の育成などに取り組んでおり、SDGsに特化した紹介コンテンツもWebサイトに掲載している。

 以上3つの教育機関はいずれもSDGs推進本部が主催する第1回「ジャパンSDGsアワード」で表彰されている。

第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞団体
第1回「ジャパンSDGsアワード」受賞団体

 世界の動向を見据えた教育施策は、教育の質や志望校選びのものさしのひとつにもなりうるだろう。これからの日本では、SDGsに関する取組みや実績に注目する受験生親子も現れるかもしれない。

 第2回アワードは2018年8月1日にスタートし、2018年9月30日まで案件の応募を受付中。応募詳細はWebサイトで確認してほしい。

 学校の統廃合や経営統合、少子化や優秀人材の海外流出などの教育課題が山積するいま、国際目標SDGsの推進および実施は「学びの場」として看過できないキーワードのひとつだ。
《佐藤亜希》

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