「Playful Learning」を実現、ケンブリッジ英語検定×工学院大附属中高の英語教育

 工学院大学附属中学校・高等学校で英語を担当する高橋一也教頭と中川千穂教諭に、「21世紀型教育」を展開する同校におけるケンブリッジ英語検定の学習効果、およびこれからの日本の英語教育のあり方について聞いた。

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左から工学院大学附属中学校・高等学校 中川千穂教諭、高橋一也教頭
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  • 工学院大学附属中学校・高等学校の廊下にはCambridge Assessmentのポスターがずらり。インストラクショナルデザインによって子どもたちの学習意欲が高まる
  • Cambridge English School Competition 2019 で工学院大学附属中学校・高等学校は世界1位を獲得
  • 工学院大学附属中学校・高等学校 高橋一也教頭
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 工学院大学附属中学校・高等学校(東京都八王子市)は、アクティブラーニングをいち早く取り入れた「21世紀型教育」の中心にPIL(対話型授業)およびPBL(課題解決型授業)を据え、学習者中心の授業を展開している。

 英語の授業はオールイングリッシュで行われ、世界最古の歴史を誇る出版社ケンブリッジ大学出版発行のテキストと、英語テストの世界的権威「ケンブリッジ英語検定」(初級のPre-A1から上級のC1レベルまで)を採用。2017年4月には中学校で日本初の「Cambridge English スクール」に認定されている。

 同校の英語教育をデザインしているのは、2016年に“教育界のノーベル賞”と称される「グローバル・ティーチャー賞 TOP10」に選出された高橋一也教頭だ。高橋教頭のもと、中川千穂教諭が「Cambridge Englishスクール・コンペティション2019」で最優秀賞を受賞するなど、独創的なアプローチで英語の授業を展開している。

 両氏に、工学院大学附属中学校・高等学校の英語教育で何を大切にし、かつどのように生徒の興味を引き出しているのか、また、これからの日本を担う子どもたちに英語教師がどう向き合っていくべきかについて聞いた。

学習環境をデザイン



--まずは、お二人が工学院大学附属中学校・高等学校で教鞭をとられるまでの経緯を教えてください。

中川千穂先生:私は大学卒業後、百貨店に勤務して、業務で英語や中国語を使っていました。その後は飲食店でも働きましたが、より自分の能力が活かせると考え教員になりました。本学へは、教育に関する考え方に共鳴して2016年に着任しました。

高橋一也先生:中川先生はヘッドハンティングされたんですよね(笑)。私は英語が好きではなかったので、受験英語しか勉強していませんでした。英語をまともに学んだのは大学時代に演劇の研究のためにイギリスへ行ったときからです。卒業後はアメリカへ渡って認知心理学を学び、企業でも働きました。その後2008年に帰国して英語科教諭になり、本学へは2015年に着任しました。

工学院大学附属中学校・高等学校 高橋一也教頭工学院大学附属中学校・高等学校 高橋一也教頭

--お二人とも、最初は英語教育に従事していらっしゃらなかったのですね。

高橋一也先生:本学は変わった経歴の先生が多いんです。ピュア(純粋な)教員は少ないですね。私の興味は、英語教育ではなく、人はどのように言葉を学習し、その効果を最大化するためにどのような学習環境をつくればよいかを追求するインストラクショナルデザインにあります。私はアメリカで、MITメディアラボの「tangible」(触れられる・実体がある、の意)という概念から生まれた「Learning by making(作ることで学ぶ)」、いわゆる「hands-on(体験学習)」について研究していました。

 学内を歩いていただけばわかるように、廊下にはポスターやホワイトボード、椅子を配置し、英語の授業では3Dプリンターによるものづくりや映像制作を行っています。私は教頭として学習環境をデザインする立場からも、学んだことをシェアすることを重要視しています。英語を学ぶことは手段でしかありません。だからこそ、PBLやCLIL(内容言語統合型学習)を実践しやすい環境を先生方に提供できるよう努めています。


工学院大学附属中学校・高等学校の廊下にはCambridge Assessmentのポスターがずらり。インストラクショナルデザインによって子どもたちの学習意欲が高まる工学院大学附属中学校・高等学校の廊下にはCambridge Assessmentのポスターがずらり。インストラクショナルデザインによって子どもたちの学習意欲が高まる

世界標準の評価ができるのはケンブリッジ英語検定だけ



--英語学習の評価にケンブリッジ英語検定を採用した理由を教えてください。

中川千穂先生:1年かけて生徒がどう学んできたか、教師がどう教えてきたかを世界標準で評価しよう、ということが目的です。英語は、日本で教えても、インドでもアルメニアでもどこで教えても同じ教科です。ですから日本独自の評価ではなく世界中の国で使われている評価を選択しました。

高橋一也先生:ケンブリッジ英語検定はauthentic(本物の・真正の)です。日本でつくられた検定はdomestic(国内の)な内容でしかありません。本学の生徒は、英語でのプレゼンテーションをまったく恥ずかしがりませんし、英語での授業内容も理解できています。ケンブリッジ英語検定ではそういうところも評価として表れる優れたテストです。

--コミュニケーションのための英語、ということでしょうか。

高橋一也先生:コミュニケーションというよりもクリエーション(創造)です。生徒たちはマニアックな文法を攻略するよりも、書いたり発表したり、創造したりすることが得意なので、世界標準のケンブリッジ英語検定で評価できます。

中川千穂先生:日本の受験中心の英語学習は、accuracy(正確さ)、complexity(複雑さ)、fluency(流暢さ)の順番で進めますが、国際標準のCEFRはその逆で、最後にaccuracyを評価します。本学も、ケンブリッジ大学出版のテキストを使ってCEFRをもとにカリキュラムを組んでいます

高橋一也先生:とはいえ受験対策は必要ですから、今は教科書の内容から入試問題を意識させることにも取り組んでいます。「テキストのこの設問は、実はこういう入試問題と同じだよね」と。

世界一の授業



--2019年の「Cambridge Englishスクール・コンペティション」で世界一に選ばれた授業について聞かせてください。

中川千穂先生:「Our hometown」をテーマにしたポスター制作を、ケンブリッジ大学出版のTeacher's manualに基づいて普段から行っている学習者中心に進めました。生徒はまず、「そもそもポスターって何だろう?」という疑問から、学内を歩き回って目に留まったポスターを批評し合いました。その後、ポスターの内容に取り掛かりましたが、調べていくうちにどんどんマニアックな内容になっていきました(笑)。そうすると、「そもそも誰が見るんだろう? 他の国の人だよね」という疑問が生まれ、今度は他の国のポスターを見ることになりました。

Cambridge English School Competition 2019 で工学院大学附属中学校・高等学校は世界1位を獲得Cambridge English School Competition 2019 で工学院大学附属中学校・高等学校は世界1位を獲得

 ポーランドやギリシャなど、自分の知らない国のポスターを見た生徒たちは、自分たちの普段の生活がユニークで素晴らしいものであること、「私たちは特別なんだ」ということに、初めて気付きました。その気付きを得てポスターの内容を決め、アプリケーションを使ってパソコン上でポスターを仕上げ、みんなでディスカッションしました。英語を読むことで世界の事象を知ることができる、日本にいながら外から気付かされることがある。このアクティビティを通じて彼らが学んだことは英語だけではないのです

--映像制作の授業もされていますね。フィルムフェスティバルで多くの作品で受賞していらっしゃると聞きました。

中川千穂先生:2017年に、当時中学2年生のグループが作成した「PEACE」が「国際平和映像祭2017」のファイナリストに選出されたのが最初です。調べた内容をそのままレポートにしてもつまらない、考えて欲しいと思いました。そこで、高橋先生から映画祭のことを伺っていたので、平和に関する映像を作って出品しようと生徒に提案しました。つくりながら「平和ってなんだろう?」と考えてもらえますから。

 自らの考えを見ている人に伝えることは非常に難しいものです。誰が見ても傷つかず、見ている人みんなに感じてもらう必要がある。日本人にしか受け入れられないものをつくっても仕方がありません。生徒は、本校で使っているケンブリッジ大学出版のテキスト「Uncover」に含まれるディスカバリーチャンネルの良質な映像から学んだり、あるいは高橋先生が「グローバル・ティーチャー賞」を通じて知り合ったエストニアの先生の生徒とも交流したりしながら、映像を完成させました。

工学院大学附属中学校・高等学校 中川千穂教諭工学院大学附属中学校・高等学校 中川千穂教諭

 字幕の英語は、恥ずかしいくらいにめちゃくちゃでしたが、私は手を入れませんでした。それでも現地の方々をはじめ多くの反響をいただきました。教師は「失敗しないようにこうしなさい」ではなく、「失敗したっていい」と言っていいと思うんです。生徒はそこからちゃんと学びますから。

生徒の好奇心は、先生のアイデア次第



--PBLやCLILによる授業は、ケンブリッジ英語検定との親和性が高いということが「Cambridge Englishスクール・コンペティション」で世界一位になった結果からわかります。

高橋一也先生:私は、生徒には「本物」に触れさせたほうがいいと常に思っていますが、残念ながら日本の英語学習は子ども向けです。出版社や有識者の思想を介して作られた教材では、本物に直接触れることができない。本校では、PBLで本物の大人から直接レクチャーしてもらうことを重要視していますので、ケンブリッジ英語検定しか選択肢がなかったといえます。

中川千穂先生:ラウンドスクエア(*)のメンバー校であることを生かし、交換留学も積極的に行っています。先週まではドイツの学生が来ていましたし、4月からはアルメニアの学生がやってきます。本校の生徒は、英語圏の人と友達になるために英語を使うのではなく、世界の共通語である英語をツールとして使っていることを理解しています。ネイティブ(母国語)かどうかといった垣根を超えた学びを、英語を使って行っているのです。
* ラウンドスクエア:国際的な私立学校連盟

--英語を学ぶうえで一番大切なことは何でしょうか。

高橋一也先生:好奇心。やっていることに興味がなければ、勉強しても仕方がありません。英語圏へ行くことよりも、学びたいという気持ちが大切です。学びたいと強く思えれば、英語というツールが必要になります。いかにして英語がなければ学べない環境をつくるかが、インストラクターである教師の役目です。そう考えているので、本校の先生方はケンブリッジ大学出版のテキストを使った面白い教材を用意できる。生徒の好奇心は、先生のアイデア次第とも言えます。

--先生方の力量もかなり問われますね。これからの英語学習に、教師はどのような姿勢で取り組むべきでしょうか。

中川千穂先生:教師もアンテナを広げることが大切です。「Cambridge Englishスクール・コンペティション」では、生徒が世界のさまざまな国にアンテナを広げ、試行錯誤し、ディスカッションを重ねることでいろいろな気付きを得ましたが、大人も一緒だと思います。教師だからといって必ずしも海外へ行く必要はないと思います。自分で必要な情報を見極め、いかに目の前の生徒のためにアレンジできるか、その力を養うことのほうが重要です。

 そして分析力。この生徒は何を考えているのか、どうしたいのか、何を幸せに思うのか。それがわからないのに、こうなって欲しいというイメージを生徒に押し付けても生徒の学びはありません。先日、新任となる先生から、予習したいので教科書を見せて欲しい、と言われました。私は教科書を見せるのでなく、「自由に考える時間はあと1か月しかないので、できるだけ見聞を広めてきてください」と答えました。いろいろなことを知ったうえで英語の教科書を使ったほうが、生徒の学びとなるPBLがつくれると思います。

高橋一也先生:従来の教え方をしている先生方に変わろうという気持ちがあるなら、方法は2つです。英語力を上げるか、教員としてのレベルを上げるか。英語力を上げるなら、自分が得意なことを英語でしゃべれるようになること。教員としてのレベルを上げるなら、中川先生がおっしゃったように、自分の考えを生徒に押し付けるのではなく、生徒ひとりひとりがもつ個性を引き出せる教育をすることだと思います。それができなければ、基本的にアクティブラーニングはできません。ICTを使えばできる、というのは、私は違うと思います。生徒と向き合い、いろいろな個性をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせてどういう面白い傑作が作れるか。生徒を信頼し、学んだことを発表させるのが一番だと思います。先生が生徒を評価するのではなく、どれだけ学んだかを生徒自身が評価するような授業をつくるほうがいいのではないでしょうか。

 そして、遊びの要素をもっと入れたほうがいいでしょう。私は常々「Playful Learning」と言っています。遊びを入れないと学びはない、授業は遊びだとさえ思っています。

Cambridge English Qualifications
--ありがとうございました。

 工学院大学附属中学校・高等学校は、理系大学の附属という強みを生かし、FabスペースやMake Roomが備えられるなど、生徒自身が自ら考え、創造していく学習環境が整えられている。「“グローバル”は自分にとって当たり前すぎて、意識したことがない」と話す高橋先生は、学習効果の評価ツールとしてケンブリッジ英語検定を選定したことに関しても、声のトーンを変えずに当然のように答えていたのが印象的だった。それほどまでに、ケンブリッジ英語検定は同校が取り組む学習者中心の創造的な授業との親和性が高いのだろう。それは、日本初のCambridge Englishスクールに認定されて2年でコンペティションの世界一に輝いたことからもうかがえる。そのコンペティションの副賞として中川先生は、ケンブリッジ大学ホマートンカレッジでの2週間の職能開発コースを受講。そこで得た世界標準の教育を自校へ展開している。

 創造力を養うことができる学習環境で、世界標準の英語を使い、未来を切り開いていく…。遊ぶように学ぶ学習者たちのこれからが楽しみだ。CEFRに完全準拠したケンブリッジ英語検定は、生徒の英語力の評価ツールとして今後ますます広がりを見せそうである。

ケンブリッジ英語検定
《柏木由美子》

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