「冷めやらぬ医学部人気」駿台医学部専門校舎が明かす2024年度入試の最新動向

 駿台予備学校は2023年11月3日、医学部専門校舎である市谷校舎で「2023医学部受験生応援フェア」を開催した。市谷校舎では全国トップクラスの医学部合格者を輩出している。参加者の大きな注目を集めた「2024年度医学部入試最新情報」の概要を紹介する。

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駿台予備学校 医学部専門校舎 市谷校舎で開催された「2023医学部受験生応援フェア」
  • 駿台予備学校 医学部専門校舎 市谷校舎で開催された「2023医学部受験生応援フェア」
  • 駿台予備学校の医学部専門校舎「市谷校舎」
  • 駿台予備学校 医学部専門校舎 市谷校舎で開催された「2023医学部受験生応援フェア」のようす。「2024年度医学部入試最新情報」に登壇した駿台予備学校市谷校舎 高卒クラス担任の平塚久雄氏
  • 医学部医学科 入学定員の推移
  • 医学部医学科 志願者数推移
  • 国公立大医学部医学科 志望者数・平均偏差値推移
  • 国公立大学医学部医学科 系統別志望動向<前期>
  • 医学部医学科 志願者数推移(2015~2023年度 私立大学 一般選抜)

 駿台予備学校は2023年11月3日、医学部専門校舎である市谷校舎で、関東圏をはじめとした人気大学の医学部が数多く参加する「2023医学部受験生応援フェア」を開催した。これは医学部受験生のために行われた1日限定の大規模イベントで、当日は各大学医学部の教授・准教授、入試担当者によるガイダンスをはじめ、医学部入試最新情報講演会、大学別個別相談会、OB・OGトークライブなど、多彩なプログラムが行われた。

 同フェアには1,000名を超える申込みがあり、会場には朝から多くの受験生や中高生、その保護者が来場。参加者は皆それぞれ熱心に情報収集や相談を行い、医学部受験への意欲を高めていた。

豊富なプログラムで医学部入試の特徴や対策を網羅

 2023年度入試で医学部医学科の合格者数が国公立大学1,628名(防衛医科大学校含む)、私立大学2,044名と抜群の合格実績を誇る駿台グループ。中でも市谷校舎は、医学部医学科の受験対策に特化した専門校舎で、開校から40年もの歴史があり、毎年全国の医学部医学科に多数の合格生を輩出している。

 今回のフェアでは、そうした医学部専門校舎ならではの医学部受験の最新情報や医学部対策講座など、豊富なコンテンツが惜しみなく提供された。フェアに参加した大学は東京医科歯科大学、筑波大学、千葉大学、横浜市立大学、新潟大学、国際医療福祉大学、順天堂大学、日本医科大学の8校で、各大学は教授・准教授ならびに入試担当者によるガイダンスと個別相談会を実施。東京医科歯科大学医学部医学科長の秋田恵一教授による特別講演はライブ会場が満席となり、映像配信教室も大勢詰めかけるほどの人気を博した。また、駿台市谷校舎職員による入試情報講演会、小論文・面接対策講座、秋の共通テスト対策講座、ICT教育体験教室、駿台の卒業生で現役の医学部生によるOB・OGトークライブなども行われ、参加者らはそれぞれ興味のある大学の情報を集めたり、医学部入試の最新情報を取り入れるなど熱心に聴講し大盛況だった。

 本記事では、同フェアで実施された入試情報講演会から、参加者の大きな注目を集めた「2024年度医学部入試最新情報」の概要を紹介する。

「2024年度医学部入試最新情報」に登壇した駿台予備学校市谷校舎 高卒クラス担任の平塚久雄氏

医学部入学定員は増加傾向にあるも、依然として高い人気

 「2024年度医学部入試最新情報」に登壇した駿台予備学校市谷校舎 高卒クラス担任の平塚久雄氏は、まず医学部医学科の入学定員の推移について、2020年度には減少したものの、その後は増加傾向にあることを示した。2024年度の医学部医学科の入学定員数の合計は10月16日現在で9,403人にのぼり、2007年度前後の入学定員が8,000人未満に抑制されていた時代に比べ「志望者にとって追い風の時代」だと評した。

医学部の入学定員は増加傾向にあり、志望者にとって追い風の時代

 ついで国公立大学の入試動向について説明。国公立大学の志願者数は、前期・後期ともに2020年度にかつて減少傾向にあったが、その後はじわじわと増加し続けている。2023年度における前期の志願者数は前年度対比で873人(6%)増となり、「昨今は下がり止めの状況」。前期の倍率はここ数年4~4.5倍で推移しているとした。一方、後期については、実施している大学数が少なく、かつ募集人数枠も前期に比べて少なくなっていることから、倍率も15~20倍とかなり高い状態が継続。2023年度における後期志願者数は前年度対比で294人(4%)増となった。

国公立大学の志願者数は2020年度以降上がり続けており、今は下がり止めの状況

 また、9月に実施した第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試から、国公立大学医学部医学科を第1志望と書いた受験生のデータを分析したところ、現役生が6,605人、既卒生が5,159人、平均偏差値は現役生が58.9、既卒生が62.2だった

 医学部志望者数はかつて既卒生の方が多かったものの、2020年度からは逆転して「今は現役生中心になりつつある」と平塚氏。「ただ、大学ごとにみると既卒生の合格者が多い大学も多く、医学部に関してはまだまだ既卒生が強い入試である」との側面も示した。平塚氏は「2023年度の平均偏差値においては既卒生の値が前年度よりアップしており、市谷校舎の高卒クラスにおいても平均偏差値が今年度はアップしている。医学部受験に関しては、既卒生も意識していかなければならないことがあらためてわかる結果」と語った。

国公立大学医学部医学科の志望者は他学部に比べて高い人気が続いている

 国公立大学の前期志望者数を前年度対比の指数でみると(前年度と同数の志望者数であれば100)、今年度は国公立大学全体の指数が97となり、医学部の指数は99と全体よりも大きい値になったことから、引き続き医学部の人気が続いている。「2025年度より新課程入試となるが、医学部志望者においては、あまり志望校を変えるようすがみられない」と平塚氏。

 関東・甲信越エリアは指数97だが、東京大学や東京医科歯科大学、千葉大学の人気は堅調で、2年連続で志願者が減少している筑波大学も指数は110となっている。

 東北エリアも東北大学が指数113の一方、弘前大学は指数88となっている。2023年度入試の福島県立医科大学のように共通テストの結果次第では流入が起こる可能性もあるため、共通テスト後の動向に注意してほしい。

 また、後期については、関東・甲信越エリアは指数92となっているが、そのなかで2023年度入試でも強気な出願が目立った東京医科歯科大学が指数124となっている。ただ、共通テストの結果によっては、個別配点が高くなる山梨大学への志望変更も考えられ、こちらも共通テスト後の動きを見極める必要がある。

 国公立大学で志願者数が増減する要因としては、

1.入試変更点があるか
2.過年度の倍率
3.共通テストの予想平均点と自己採点結果(合計、各科目)


 この3点が大きい。また、そもそも国公立大学は共通テストが終わった後に志望が大きく動くことから、上記のデータについても「あくまで現時点での状況である」とした。

共通テストの試験問題はページも文字数も増加、点が取りにくい

 続いて、2023年度の共通テストを振り返った。2006年度から2023年度までの共通テスト(旧:センター試験)の予想平均点の推移をみると、2023年度理系は5教科7科目で平均551点となった。前年度の大きな落ち込みに比べると幾分戻ったものの、2006年度以降では過去2番目に低い得点だったことから、「センター試験より点数が取りにくい試験なのは事実」だと指摘。点を取りにくい理由については、例として数学をあげ、センター試験に比べて試験問題のページ数が大幅に増え、問題の文字数も15年前の約5倍に増加し、文章を読む力が大きく求められていることを示した。「短い時間で大量の文章を読み、正確に問題を解く力が求められている。また、来場者限定で投影した医学部の合格者における各科目の平均得点率の3か年対比をみると、かつてのセンター試験において稼ぎどころの科目であった英語・数学・理科の平均得点率はバラつきが生じている。このことを踏まえ、やはり英語・数学・理科の対策もしていきながら、国語や地歴・公民をしっかりと固めておくと全体の安定感が増す」と評価した。

 共通テスト後に受験する国公立大学の個別試験については、志望大学を選んでいく上で、自分の学力とその大学の入試問題がマッチしているかを確認する必要があると語った。例として、富山大学の個別試験では、他の大学に比べて英語の自由英作文の語数が250語と、やや多い出題となっていることをあげ、大学ごとの問題の傾向をつかむことが大切だとした。

 また、2025年度から始まる新課程の入試については、導入が予定されている「情報」について、10月26日現在で取り扱いを公表している大学の状況をみると、多くの大学で得点化するものの、100点採用する大学は多くなく、50点や25点に圧縮して活用する大学が多くなっている。さらに、現高校3年生が浪人した場合の2025年度共通テストについては、旧課程履修者が不利にならないよう配慮し、「地歴」「公民」「数学」「情報」において旧課程による出題科目で受験できる経過措置が取られるとして、安心して取り組んでほしいと述べた。

私立大学志願者数も人気が継続、倍率は30倍超

 次に続いたのが、私立大学医学部の受験についてだ。私立大学医学部医学科の志願者数は、2023年度は9万4272人で前年度より4000人近く増えた。推移をみると、国公立大学と同様にコロナ禍などにより2022年度にかつて減少が続いたものの、2023年度は志願者数が増加に転び、下がり止めの状態となっている。倍率については、国公立大学前期に比べると、複数校に併願ができる私立大学の倍率は30倍超と高い倍率が続いている。

私立大学医学部医学科の志願者もコロナ禍などにより減少が続いたが、回復傾向。併願により倍率が高いのが特徴

 9月に実施した第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試のデータをみると、2023年度の私立大学医学部志望者は現役生が1万2,649人、既卒生が1万1,648人となり、私立大学でもここ数年現役生の方が多くなっている。

私立大学医学部の志望者数を前年度対比の指数でみると、私立大学全体の指数が94だったのに対して、私立大学医学部は100となり、こちらも人気が続いている。地域別に動向をみると、関東圏の慶應義塾大学や順天堂大学、東京慈恵会医科大学はほぼ前年度並だが、日本医科大学は1次試験の日程が日本大学など3大学と重複していることも影響してか、指数は93と減少している。東海大学は2023年度入試の一般選抜で現行課程の数学IIIを出題範囲に含めない変更があり、前年度の指数は115と大幅に増加。数IIIの勉強が遅れている現役生なども受験できることが増加の要因と見られるが、今年度はその反動もあり、84と減少している。また、東京女子医科大学も前年度の指数が134、今年度が87と大きく動いた。同大学は2021年度に学費総額を大幅アップし、3年連続で志願者が減っていたものの、2023年度入試はようやくその反動で大幅に増え、今年度はまたその反動で減っている状況だ。

 一方、西日本では大阪医科薬科大学と関西医科大学の学費が安くなり、前年度・今年度ともに大幅に志望者が増えている。

 平塚氏は、私立大学における志願者数増減の要因について、

1.入試変更点があるか
2.過年度の倍率

に加えて私立大学の場合は、

3.入試の日程
4.学費の変更

も影響するのが大きな特徴だとした。

私立大学医学部医学科も志望者数は現役生が多く、平均偏差値は既卒生が特にアップ

私立大学は出題傾向に合わせた個別対策を

 私立大学医学部の入試問題で英語の問題を見比べると、医学・医療、生命と言った自然科学系のみならず、社会科学系、人文科学系などテーマはさまざまであり、試験時間もバラバラで大学によって異なるため、受験生は各大学がどんな力を求めているのかを見極めつつ、過去問を解く際には時間を意識して訓練することが重要だとした。

 また、私立大学医学部の場合は、学科試験と面接試験に加えて、多くの大学で小論文試験を課しているのも特徴的だ。入試問題と同様、小論文についても、大学ごとに特徴があり、個別の対策が欠かせない。平塚氏は「過去にどんな出題があったのかを事前に把握すること、そして、日ごろから物事に対して自分なりの考えをもつこと」とアドバイスした。

 平塚氏はさらに、私立大学医学部の入試スケジュールと、国公立大学を含む各校の入試変更点を紹介。「私立大学の医学部は、共通テスト終了後すぐに一般選抜が始まるため、他学部志望者と同じペースで進めていては間に合わない。とにかく『医学部入試はペースが早い』という意識をもってほしい」と強調した。

 すべての変更点をここで紹介することはできないが、入試日程や内容に変更があった大学をいくつか見てみよう。

 国公立大学医学部では、山形大学は入試科目から国語を除外。山梨大学は入試科目に外国語(英語)を加え、面接をグループディスカッションに変更するとともに、得点化する。また、岐阜大学は第1段階選抜基準を約9倍から約3倍に変更。奈良県立医科大学は、前期日程試験内容が学科試験と論文から、論文と面接に変更となっている。(2024年度国公立大入試変更点一覧【2023年10月30日版】

 私立大学医学部では、獨協医科大学は共通テスト利用選抜で、外国語(英語)・数学・理科2科目に追加して、国語も課されるようになった。また、杏林大学は共通テスト利用選抜で外国語(英語)必須から外国語(英語)か国語から選択に変更となった。産業医科大学は共通テスト+独自試験、共通テストのみ、独自試験のみと受験パターンが3つに増え、私立大学専願の受験生も受けやすくなっている。なお、2024年度入試は試験会場が変更になっている大学も目立つため、よく確認してほしい。(2024年度入試 私立大変更点一覧【2023年10月30日版】

共通テスト後すぐに始まる私立大学受験、とにかくタイトなスケジュール

 近年の医学部受験生の受験パターンとして、共通テストを皮切りに、1月中旬から私立大学入試、2月に国公立大学前期入試、3月に国公立大学および私立大学の後期入試を受験の流れになっており、私立大学は概ね3~8校程度を受験するケースが多いという。

 今後早めにやっておくべき対策としては、学習面では「私立大学受験生は過去問を1~3年分は解く」「医療系英単語の出題がある大学を受ける場合は単語の確認」「共通テスト対策が必要な科目はそろそろスタート」とアドバイス。さらに、医学部ならではの取り組みとして、「志望理由書の準備」「遠方からの受験者は移動手段と宿泊先の確保」「私立大学受験者は試験会場の確認」「面接・小論文対策」も必要だと説いた。
 そして、「今の模試がうまくいかなくても決して焦らず、最後まで伸びることを信じて取り組んでほしい」と結んだ。

「スタートは遅いものの最後まで伸びる現役生。焦らずに自分を信じるべき」

医学部受験に向けて意欲が高まる講演会

 国公立大学から私立大学まで、医学部受験の最新動向やその特徴、各校の変更点などをコンパクトにわかりやすく解説された講演会だった。非常にタイトなスケジュールや、受験科目数が多いこと、面接・小論文が課されることなど、医学部入試ならではの特徴や、それに向けての対策、心構えなどが具体的に示され、いよいよ受験に向けての意欲が高まった親子も多かったようだ。駿台は、今後も多くの講演会や直前講座の開催を予定している。医学部受験を検討する生徒や保護者はぜひ参加してみてはいかがだろうか。

駿台の2023年度医学部医学科合格実績
国公立大学1,628名(防衛医科大学校を含む)・私立大学2,044名

駿台予備学校の医学部受験コース、詳細はこちら

【対象】中学生・高1生・高2生/保護者
11都道府県19会場で12月・1月開催 医学部入試情報講演会
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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