無線LANの通信中断を解消、リッチデータ化も見据えた聖望学園のICT環境

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聖望学園のICT活用授業
  • 聖望学園のICT活用授業
  • 黒板の上にバッファローのアクセスポイント「WAPM-2133TR」が設置されている
  • バッファローのアクセスポイント「WAPM-2133TR」
  • タブレットを活用
  • 複数の生徒のタブレット画面を黒板に映し出す
  • 聖望学園の関純彦 学校長
  • 聖望学園でICTを統括する永澤勇気教諭
  • バッファロー ネットワーク事業部 製品企画担当の柴田成儀氏
 文部科学省は、2020年からの新学習指導要領において「1人1台のタブレット」を目標に掲げ、「デジタル教科書」を全国の小中学校と高校で導入する方針だ。これに先駆け、聖望学園中学校(埼玉県飯能市)では、生徒1人1台のiPadを活用した双方向授業を積極的に展開している。実際にどのような環境整備が行われ、生徒がどう授業に取り込んでいるのか、中学2年生の数学の授業を取材した。

◆積極的にICTを取り入れる聖望学園

 埼玉県飯能市にある聖望学園は、キリスト教に基づいた教育理念で運営されている男女共学のミッションスクールである。中学校では1クラス約20人程度の少人数で、きめ細やかな指導が行き届いた教育を、高校では高校からの入学者を含む4コース制で、進度に応じた指導により着実な成果をあげている。

 大学合格状況は、昨年度比で国公立が150%、早慶上理180%、GMARCH140%アップ。各コースで目標を定め、各自が自覚して学習してきた結果だという。部活動では、運動部、文化部ともに、全国大会に出場するほどの実績をもつ部がいくつもあり、生徒たちは豊かな自然に囲まれた、閑静で広大な学び舎で充実した学園生活を送っている。

 少人数で行き届いた手厚い教育を目指す聖望学園中学校では、生徒の理解を深めていくために積極的にICTを取り入れており、昨年からは生徒全員にiPadを貸与し、授業だけでなく家庭学習にも使えるようにしている。

◆タブレット活用の利点は双方向と即時性

 同校でICTを統括する永澤勇気教諭は次のように語る。

 「生徒ひとりひとりがタブレットを使うという環境の最大の利点は、インタラクティブ(双方向)かつリアルタイム(即時)であることです。教える側にとっては、それぞれの生徒が自分の授業をどの程度理解しているか、リアルタイムに把握することができるので、そのときの理解度に合わせて授業の内容を柔軟にアレンジすることができ、授業が進めやすくなりました。また、生徒にとっても、誰がその授業を理解し、誰が理解しきれていないか、クラス全員の状況が一目でリアルタイムにわかるので、生徒間で『教え合う』ようになり、結果として互いの理解度が深まるという利点も見えてきました。導入前に比べて授業が楽しいと言い、授業への参加意識も向上しています。」

 生徒たちは、このICT授業をどのように捉えているのか。

 「学校へ来てタブレットを開くと、朝の小テストが届きます。それを送信すると、先生がすぐに採点してくれて、答案を確認することができます。プリントをやり取りする必要がなく、とても便利です。」

 「以前は授業のプリントとして配られていた紙の教材が、今はタブレットのフォルダの中にきちんと整理して納められているので、プリントをファイリングする必要がなく、紛失することもなくなりました。家にも持ち帰ることができ、復習しやすいです。」と、生徒たちがタブレットを有効活用しているようすが伺える。

 取材した中学2年生の数学の授業では、電子黒板に映し出された教材が、生徒たちのタブレットにも同期され、さらに教師が黒板にフリーハンドで記入したものを同期させたい場合と、生徒たち自身に作業させたい場合を巧みに使い分けていた。生徒たちが作業したものは一覧で見られるようになっており、誰が正解したかがわかるので、クラスのどの程度が理解できているかを教師も生徒もその場で把握できるようになっていた。「誰がサボっているかもすぐにわかりますよ」と永澤教諭は笑う。おのずと参加意識が高まるというのも頷ける。

◆授業中の通信中断・速度低下は深刻な課題

 一方で、ICTは「I(いつも)C(ちょっと)T(トラブル)」と揶揄されるように、アップデートできない、充電が切れそう、プロジェクターに映らない、などなど、現場ではさまざまなトラブルに見舞われがちだ。その中でも深刻なのは、通信トラブルによる中断だ。特に学校では40名程の生徒が一斉にタブレットを使ううえで、全員の通信速度のばらつきが起きず、一定でなければならない特殊環境である。たとえ一人でもファイルの送信がうまくいかないということがあれば、授業は停滞してしまう。

 一般的には、30秒以上の待ち時間が生じると、クラス全体の集中力が途絶えてしまい、元の授業の状態に戻すのに多大な労力がかかる、というのが現場の大きな悩みであると言われている。

 聖望学園においても、教室内の無線LANが授業中に中断するというトラブルに何度も見舞われてきた。相談を受けたバッファローのフィールドエンジニアによる調査の結果、DFS(=Dynamic Frequency Selection;動的周波数選択)による障害が原因とわかった。DFSとは、5GHz周波数帯の「W53」「W56」で気象・航空レーダーなどの干渉があった場合、アクセスポイント側が干渉のないチャンネルに退避する仕組みである。法律で義務付けられているため、アクセスポイントには必ず搭載されている。干渉した場合には、移動予定のチャンネルがレーダー波と干渉しないかを無線LANを止めて60秒間監視する必要がある。

 聖望学園の周辺には、入間基地、朝霞駐屯地、所沢通信基地、横田基地など、周辺に航空レーダーをもつ施設が多いこともあり、ICT活用推進のためには、DFS障害回避が喫緊の課題であった。

◆課題を解決したアクセスポイント「WAPM-2133TR」

 これを解決したのが、バッファローのアクセスポイント「WAPM-2133TR」だ。レーダー監視専用アンテナを搭載し、干渉しないチャンネルを常に監視、把握することで、レーダー波を検知した際に、瞬時に干渉しないチャンネルへと自動的に切り替えを行う。

 また、同時に接続する機器が増えると帯域が不足し、通信速度が低下してしまうが、このアクセスポイントでは2系統の5GHzと1系統の2.4GHz、合計3つの帯域で同時通信が可能なトライバンドをサポート。端末を適切な帯域に分散させるバンドステアリングで、トラフィックをコントロールできるため、多台数同時接続時にも安定した通信環境を可能にする。

 「DFS障害回避機能により、全教室のチャンネル重複を回避できます。また、トライバンドと、端末を適切な帯域に分散させるバンドステアリングでトラフィックがコントロールできるほか、動画再生の際にタブレットごとに速度のばらつきがない公平通信制御機能も搭載されており、多台数同時接続時にもストレスフリーな授業展開が実現可能です。」(バッファロー ネットワーク事業部 製品企画担当の柴田成儀氏)

 聖望学園のケースのように、干渉の要素が多い特殊な環境下のみの問題であるかのように捉えられがちだが、柴田氏は次のように指摘する。

 「DFSは一般的にも比較的よく起こる現象です。都心部でも豊洲や神田、あるいは新潟のような地方都市でも発生していることがわかっています。2020年に向けて、タブレット授業の推進が掲げられていますが、現場へのスムースな導入のためにはDFS障害回避機能は不可欠です。」

 「WAPM-2133TR」の導入以来、聖望学園中学校における授業中の通信切断のトラブルは一切なくなったという。

 「このアクセスポイントはアンテナが内蔵されているので、アンテナ破損のリスクがない点も魅力」(永澤教諭)と、デザインも好評だ。

◆将来のリッチデータ化への備えも

 現在は、授業支援ソフトや電子黒板の画像転送機能で共有といったタブレットの活用法が主流のため、データ転送容量は数100KBだが、2020年以降、デジタル教科書が導入されるようになると、音声データや映像データのダウンロードなどにより、データ転送容量が大幅に増加していくことが予想される。

 タブレット授業を支える無線LANのインフラは、この将来のリッチデータ化にも対応できる通信の安定性と広帯域の実現が必須となるだろう。今後を見据え、いち早くこれらの機能を万全にした聖望学園では、順次高校へも展開していく予定だ。

 「生徒ひとりひとりの理解を深め、学力を向上させていくために、そして、先生方がますます創造的な授業を展開していけるように、今後も積極的にICTを導入していきたい」と関純彦校長は意気込む。

 新学習指導要領が目標とする「1人1台のタブレット」「デジタル教科書の導入」の実現には、コスト面からの難しさが論点にあげられることが多い。しかし、この公開授業を機に、技術的な課題こそ着実にクリアしていく必要性を痛感した。映像、音声といった膨大なデータ容量のコンテンツを教育現場でいかにストレスなく扱えるか。それを支えるインフラ構築を甘く見れば、次世代の新たな教育ビジョンは絵に描いた餅に終わりかねない。あと3年。複眼的な見地で、実施に向けた推進を期待したい。
《加藤紀子》

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