永久歯への移行時期が矯正治療開始のタイミング、2年で一生ものの歯並び

 子どもの歯の矯正治療には年々関心が高まっているが、いつ頃から始めればよいのか、子どもの負担にならないかなど、ざまざまな不安から治療に踏み切れない保護者も多いという。子どもの歯の矯正治療について専門医に聞いた。

生活・健康 健康
スーパースマイル国際矯正歯科の賀久浩生氏と賀久麻織氏
  • スーパースマイル国際矯正歯科の賀久浩生氏と賀久麻織氏
  • 中央の透明な矯正装置がインビザライン
  • インタビューに応える矯正歯科専門医の賀久浩生氏
  • インタビューに応える小児歯科専門医の賀久麻織氏
  • インタビューに応える賀久浩生氏と賀久麻織氏
  • 治療方法の紹介
  • 診療エリアの様子
  • 治療に通う子どもたちの写真
--子どもの歯の矯正治療に適した年齢はあるのでしょうか。

 骨格的な問題に移行しそうな場合は、かみ合わせを治すなど、機能的な問題を取り除くことを早い段階で行っておくことが有効で、その年齢は状態によってさまざまです。

 歯並びに関しては、一生に一度だけというタイミングがあります。それは、乳歯から永久歯への生え変わる途中の平均的には10歳前後の時期です。生え変わる永久歯は、乳歯よりも大きくスペースが必要になるのですが、一番奥の乳歯が抜けた後に生え変わる永久歯だけは、乳歯よりも小さいのです。これは、人種も性別も関係ありません。この歯と隣接する歯との間にできる隙間を利用すれば、短時間で矯正することが可能です。

 ちょうど中学受験と重なる時期ですが、この時期を逃すと、その分のスペースを広げるために別途治療が必要になり、期間や費用が生じることもあります。場合によっては抜歯の可能性も高まります。

◆抜歯なしの治療、要する期間は平均2年前後

--治療はどのように進められますか。

 最初に検査を行い、レントゲン写真をもとに、歯の傾き具合や骨格を調べ、同じ年齢の平均的な数値と比較します。何らかの問題が見つかれば、歯がずれているだけなのか、骨格までずれているのかを調べます。

 治療は、まずは小学校低学年で骨格的・機能的な問題があれば対処します。ケースにより様々な治療方法・装置を使用しますが、たとえば、左右非対称の場合、上顎の幅を広げる装置を使って上下の奥歯を正しい位置関係に導きます。また、受け口の場合は、キャッチャーマスクのような装置を使って、上顎を前に出していく方法もあります。これは、自宅で睡眠時間を含め1日10時間の装着が必要です。

 歯並びの矯正については、従来型のワイヤーとブラケットを使う固定式の装置の他に、最近では「インビザライン(invisalign)」という透明で取り外しができる装置もあります。「アライナー」と呼ばれるマウスピースを食事と歯磨き以外の1日約20時間装着してもらい、新しい形のものに定期的に交換していきます。交換用のマウスピースも事前にお渡しできるので、毎回通院する間隔を6~8週などに対応できます。

 私たちは「非抜歯矯正(歯を抜かない矯正)」に力を入れています。当院で行っている非抜歯矯正は、まず奥歯を正しい位置に治すことで前歯の方にスペースを作った上で歯並びを整えていく方法です。抜歯をして前歯だけきれいに並べることもできますが、将来にわたってきれいな歯並びを維持することを考えると、奥歯から正しい位置に治していく必要があると考えています。奥歯の調和がとれていないと、大人になって再びずれてきてしまい、また治療しなければいけなくなるかもしれません。当院では、機能的な矯正と歯並びの矯正の両方が必要な場合も、合わせて2年くらいで治療を終えられるように努めています。

◆受験と矯正治療、子ども本人のモチベーションが結果を左右

--中学受験の時期と重なる治療の場合、躊躇する親御さんも多いのではないでしょうか。

 「痛みが出るかもしれない」「今は受験に集中させたい」と考える親御さんも多いです。しかし、痛みは持続するものではありませんし、来院も4~6週間に一度で30分程度のことですから、勉強を妨げるほどではないでしょう。

 矯正治療は、受験と似ているところがあります。塾に通ったら受験に合格するというわけではないのと同じで、やりたくないのに無理矢理やらされていると感じる子は、少しでも痛いと気になってしまいますが、治したいと思っている子は前向きに取り組みます。矯正治療はある意味、ひとつの目標に向かっていくことなんです。
《柏木由美子》

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