【EDIX2018】96%が「楽しい」英語授業、AIロボットの可能性…同志社中学校・高等学校 反田任氏

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同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田 任 氏
  • 同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田 任 氏
  • 「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナーの会場のようす
  • 「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナーの会場のようす
  • 「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナー資料「Musio授業関連アンケート調査」
 2018年5月18日、東京ビッグサイトで行われた「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX2018)」において、同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Managerの反田任(たんだ たかし)氏による「学びNEXT」専門セミナーが開催された。

 セミナーのテーマは「AIロボット」。「英語4技能を楽しく習得!同志社中学校に学ぶ 先端テクノロジー×英語教育」と題したセミナーには多くの人が来場しており、中学校の英語学習における「英語4技能」と「AI」というテーマへの関心の高さがうかがえた。

 2014年度から生徒ひとりに1台のiPadを導入し、ICT教育を推進してきた同志社中学校。ICT教育の推進を始めてから5年目にあたる現在は。中高あわせて1,600台のiPadを導入し、日々の学習に活用しているという。英語学習において、ICT活用はどのように進められているのだろうか。

中学生の43%は英語嫌いの現実



 反田氏はまず、文部科学省の平成27年度中学生英語力調査を引用し、「英語が嫌い」と答えた生徒は全体の43%、「授業でスピーチを行っている教員」は53%という結果を例にあげ、「同志社大学の学生の教育実習を担当しているが、一文一文読ませて確認をとる、という授業プランを書いてくる。(教育実習生は)自分に染み付いている授業を提案してくる。これを払拭することが難しい」と、英語教育の現状に言及。「『話すこと』のテストスコアが高いほど『英語好きである』割合が高く、英語が通じるという自己肯定感を持った生徒の方が英語が好きであり、アウトプットを重視した4技能統合型の授業が求められている」と紹介した。

 調査結果をもとに、反田氏は「英語4技能は、互いに影響しあって力が高調していくこともある。これからは自分の考え方をアウトプットしていく、スピーチやプレゼンテーション、ライティングが重要になってくる」と述べた。

身近なデバイスを活用して「発話量」を増やす



 「英語による言語活動」「英語でのアウトプット」「知識習得・語学力・思考力+コミュニケーション力」に加えて、ICTの活用が英語運用能力の向上につながり、アクティブラーニングを取り入れた授業デザインが重要になるという。

 「スマートフォンなどの身近なデバイスを子どもたちはたくさん持っているので、それをリスニングやスピーキングに応用していくことも必要。ICTを活用して学年や個人のレベルに応じた指導ができてくる」と自らの体験をもとに語った。

 「英語の教科のなかでも、英語を通じて学ぶことが多く、特に中学校のリーディングの題材、高校の教科書の題材は、英語を学ぶというより英語を通じたいろいろなトピックを学んでいる。英語はコミュニケーション、あるいは、何か知識を得るためのツールのひとつだというように考えることができる。そういう英語力をどう身に付けるかという視点を先生が持つことも大切。そういったなかで“発話量”を増やすことが重要。そこで、テクノロジーを英語学習に導入していくことができる」と、先生の持つべき視点を説明した。

AIを活用した英語学習が現実



 同志社中が2016年5年に1台導入した「Musio」は、本社をアメリカに置く「AKA」の製品。AIを用いた、英語学習ロボットだ。小学生向けのオープンキャンパスでの英語体験授業や、授業でも交代で利用していたところ、2017年9月には20台導入し、「Musio教室」を設置。10月からはひとり1台、グループ1台という環境での授業を展開している。

「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナーの会場のようす
「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナーの会場のようす

 「Muse」という人工知能エンジンを利用したMusioの使い方は2種類。チャットモードは、Musioと人が会話をしていくモードだ。チューターモードは、設定した題材・教材に基づいてMusioがチューターの役割をするモードで、練習したい内容によってモードを切り替えることができる。

 発音を評価をするチューターモードでは、Musioに話した言葉が伝わると、Musioが「Cool」「Good Job」などと答える。チャットモードでは、聞いた質問に対してインターネットで答えを探し、流暢な英語ですぐに回答する。同じ質問を何度もすると「You can Google it.」と言うこともあり、コミカルなところもあるという。

 「新聞などにもMusioを導入した授業が取り上げられたが、私が授業をしていなくてAIが授業をしているような内容になっている。実際にALTの先生を配置すると年間500万円程かかる。その何十分の1かの費用で導入できるし、ひとり当たりの『発話量』を増やすことができる」とコストと効率ともにAIロボットを英語学習に取り入れる利点を語った。

ロボットだから、何度も・自分のペースで



 「私自身、AIですべてが解決すると思っていません。最終的には人と人のコミュニケーション。でもネイティブの先生を1時間に大勢来てもらうことは難しい。そこにAIをうまく活用する」という反田氏は、Musioは個別学習と協働学習に適していると述べる。

 「2人1組で発話練習をしたり、自分のペースでじっくり練習することもできる。生徒は全員iPadを持っているので、メモ機能を使用してマイクで英語を話せば文字化できる。生徒たちはMusioだけでなく、iPadの機能でも個人で学習している。2人1組で使うとライバル心が生徒に生まれて、モチベーションが上がり、『Try Again』と言われると悔しくて自分で練習する。おそらく僕が生徒ひとりずつに発話をさせて『Try Again』と何度も言ったとすると、僕に何度も言われた生徒たちは嫌になってしまう。ロボットである、AIである、ということが非常に生徒たちの印象として良いのではないだろうか。」(反田氏)

 反田氏によると、iPadの学習は何が良いかを子どもに評価してもらったところ、デジタル教科書が良いと答えた生徒が97%だった。理由は、今まで英語の授業では、先生の発音がわからない場合でも止めることができなかったが、デジタル教科書なら、何回も自分のペースで勉強できる、という意見があったそうだ。「Musioも同じだと思う。生徒は自分の英語力を上げたいし、何回もやることが苦痛なのではないんだと感じた。」(反田氏)

 Musioと学習して英語が楽しくなったか、という質問に対し96%が楽しくなったと回答したアンケートを紹介し、「自己肯定感が英語を話そうというモチベーションにつながっていくと私は思います。世界で発信されている情報は英語が一番多い。英語を自分から発信してコミュニケーションができることが必要な時代」と手ごたえとともにグローバル社会での「英語」の必要性を訴えた。

「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナー資料「Musio授業関連アンケート調査」
「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」同志社中学校・高等学校 英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏による「学びNEXT」専門セミナー資料「Musio授業関連アンケート調査」

教師像・生徒像2020 “学び続ける”生徒を育てる



 反田氏は、Musioがいる教室の状況を「私の分身が18人いる状態」と表す。続けて、「私が教えることが少なくなりました。より少なく教えることにはなるけれど、うまくできない生徒を重点的に助けられる。これこそ『個の学び』だと思います。先生の役割は大きく変わっていくと思います。『ACTIVE Learner 学び続ける生徒』をどう育てていくかが先生に求められていくことだと思います」と述べる。

 会場につめかけた来場者に向けては、「ICT教材は英語教育と親和性が高い。こういった機器を利用しない手はない。これから教育のなかで教師はICTを活用する視点をもっていくことが必要。進化が早くてあっという間に次のものがでてくる。先生たちも日常でスマートフォンを使っている。それをどう使うか考えると良いと思う」と語りかけ、2020年の教育改革における教師と生徒の理想像を共有した。

テクノロジーを教育に生かしていくという視点を



 「EdTech(エドテック)」という言葉がある。近年は教育現場のあちこちで耳にすることが多くなった。これは、「Education(教育)」と「Technology(技術)」」を掛けあわせた言葉だ。日本の教育業界ではまだ「ICT」という言葉の方が馴染み深いが、反田氏はこの「ICT」という言葉からは「電子黒板、コンピューターを教室に入れましたというイメージ」を受けるという。

 「EdTechは、テクノロジーをどう教育に生かしていくかということです。個に応じた学び、生徒ひとりひとりに寄り添った学びがこれから必要になっていく。そういったなかでAIロボットやデバイスは英語学習に有効に使っていけるもの。先生もそういった視点でテクノロジーを捉えていってほしい。」(反田氏)

 とは言え、学校のICT活用はなかなか進まないのが現実。そういった課題に対し、同氏は同志社中で起こったMusioによる変化を受け、AIロボットのようなテクノロジーが生かされたプロダクトが教室にいる・あるだけで生徒のモチベーションが変わる可能性を強調する。「先生たちが『授業は工夫』できるという視点からテクノロジーを捉えて教育に生かせば、これからの授業・教育が変わっていくのではないかと思います」とし、講演を締めくくった。

 96%の生徒が楽しいというロボットが教える英語学習の成果を聞いたセミナー参加者からは、講演後に多くの質問があった。「スピーキングの試験は人間が採点しないで、AIに任せるのも良いのでは」という意見に対し、反田氏は「AIは忖度しませんのでまさにその通り」と答え、正しい数値で評価できるAIならではの活用方法に前向きな姿勢を示した。

 AIの答えには“忖度がない”ように、「楽しい」と思う生徒の感想に偽りはないだろう。生徒たちは「自分のペース」で学習することに喜びを感じ、「何度も練習に反応し付き合ってくれるロボット」と学習することが好きなのだ。自分の英語スキルに自信を持ち、積極的にコミュニケーションをとり、知識をアウトプットする―。「Active Learner」たちには、親世代が6年間英語を学習してもなかなか身に付けることができなかった英語スキルを軽々と習得し、その世界を拡げていってほしい。
《田口さとみ》

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