水を守り育てる取組みを…水の週間中央行事「水を考えるつどい」

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水資源功績者と作文コンクールの受賞者
  • 水資源功績者と作文コンクールの受賞者
  • 全日本中学生水の作文コンクールで最優秀賞を受賞した、前田野乃葉さん
  • 全日本中学生水の作文コンクールの授賞式
  • 最優秀賞「水がつなぐ自然と家族」
  • 開会式には皇太子さまも臨席された
  • 第1部の基調講演。日本水フォーラム代表理事の竹村公太郎氏
  • 慶應義塾大学名誉教授岸由二氏による基調講演
  • “流域思考”の大切さを語る、岸氏
 「水の日」の8月1日、東京都の科学技術館で「水を考えるつどい」が開催された。8月1日から7日までの“水の週間”における中央行事に位置付けられるイベントで、このほかにも水の週間前後には、全国各地で「水のふれあいコンテスト」をはじめとした、さまざまな水に関わるイベントが実施された。

◆水にちなんだイベントを“水の日”に開催

 水の週間にちなみ行われたイベント「水を考えるつどい」は、基調講演とパネルディスカッションの2部構成。この日、イベントには皇太子ご一家が臨席された。愛子さまの公的な式典への出席は初めてとのこと。開会に先立ち、第1部基調講演の前には主催の国土交通省副大臣の山本順三氏らによるあいさつや、水資源に功績のある団体・功績者と「全日本中学生水の作文コンクール」の優秀作の表彰が行われた。

 また、臨席された皇太子さまは、「水を守り育てる取組みは不断の努力を必要としますが、『水の週間』をきっかけとして、水の大切さに対する国民の関心と理解が一層深まることを願い、私のあいさつといたします」とのお言葉を述べられた。

◆中学生による秀作多数、水の作文コンクール

 「全日本中学生水の作文コンクール」は、水についての理解を深め考えることを目的に、全国の中学生を対象に昭和54年より実施されている。2016年は1万5,246編の応募作品の中から、最優秀賞の内閣総理大臣賞1編のほか、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞などの優秀賞9編、入選26編が選ばれた。表彰式の司会進行は、2016年度ミス日本「水の天使」須藤櫻子氏が務めた。

 最優秀賞を受賞したのは、富山県高岡市立五位中学校3年生の前田野乃葉さん。代表として表彰式に臨み、その後、自身の作品を壇上で朗読した。受賞作の「水がつなぐ自然と家族」は、兼業農家を営む祖父から自然の大切さを教わったというエピソードをもとに、地元である富山県の自然の素晴らしさを語り、水環境を守っていくという抱負につなげている。朗朗とした声で水の大切さを語る前田さんの姿が印象的だった。

 ほかの受賞作品からも、家族や友人との会話での気付きや自らの体験を通し学んだことなどをふまえ、水の大切さを訴え、限りある資源を大切にしていこうという姿勢が感じられた。また、熊本地震で被災者が第一に水を求めていたという報道などからも、学ぶことは大きかったようだ。

◆江戸時代に始まった“流域思考”を見つめ直す

 「水を考えるつどい」第1部の基調講演では、まず日本水フォーラム代表理事の竹村公太郎氏が登壇した。竹村氏は「近代化における流域社会の崩壊そして再生」をテーマに、江戸時代から“流域ごとに分散していた国家”が、交通網などの発達により都市に集中し膨張していった流れを語った。「結果として、効率化が求められ生態系が破壊されると、林業・農業・漁業などの衰退につながっていく」と問題点をあげ、多様性のある流域社会を作り直す必要性を強調した。

 続いて、慶應義塾大学名誉教授の岸由二氏が「流域思考で地球を暮らし直す」というテーマで講演を行った。岸氏は「学校教育では、流域について教えない。義務教育でぜひ教えてほしい」とし、河川管理者による流域啓蒙の必要性を語った。さらに、流域のみならず地図に対して日常的な関心をもたない現代人へは、「リバーネーム(川の名前)」を使用することを提案。「リバーネーム」とは、自分の地元を流れる川の名前を、ミドルネームのように名前や名刺に組み込むという試み。このリバーネームを使うことで、流域や地図を自然に意識でき、“流域単位で考える”という視点に立った流域思考への啓蒙につながると岸氏は語った。

◆「どんぐりの森」づくりで自然環境教育

 第2部では、「流域社会と水循環」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。基調講演に登壇した竹村氏と岸氏と、福井県大野市の岡田高大市長、大淀川流域ネットワーク代表理事の杉尾哲氏、日本コカ・コーラ副社長の後藤由美氏の5名が、それぞれ行っている取組みを紹介し、水資源の活用について話し合った。

 岡田市長は、地下水再生計画をはじめとした40年間にもわたる大野市の水資源活動を紹介。九頭竜川流域の自然環境を保全する「どんグリーン広場」では、どんぐりの森づくりをはじめとした自然環境教育や自然体験を、子どもたちに向けて行っている。

 国土交通省のデータによると、日本は109もの1級水系の流域があるとされている。地球温暖化や気候変動といった問題に対応していくためには、自然といかに付き合っていくかが大きな課題となる。自然と密接なつながりのある流域を意識し、流域単位で考える“流域思考”は、これからのひとつの指標になっていきそうだ。

 なお、「水の週間」関連イベントとしては今後、8月16日から18日にかけて東京国際フォーラムで開催される「丸の内キッズジャンボリー2016」において、水をテーマにしたワークショップと展示が行われる。水の重要性への理解や関心を深められるよう、「トイレットペーパー実験」や、雨の仕組みを学べる教室などが予定されている。

 あまりにも身近にありすぎて、その大切さを忘れがちな水は、恵みにも脅威にもなりうる。特に、今年は首都圏では水不足が深刻で、利根川水系のダム貯水量は過去最低の状態が続いており、水の必要性を日に日に感じている。“流域”という言葉自体知らない人が多い現代ではあるが、自分がどの流域に属し、どんな恩恵を受けているかを知ることも大切だと痛感した。この夏、子どもと一緒に地図を調べたり、地元の川沿いを散歩したりと、自分の身近にある流域を知り、水についての勉強をしてみるのもよいだろう。

◆第38回(平成28年度)全日本中学生水の作文コンクール
・最優秀賞 1編
内閣総理大臣賞
前田野乃葉(富山県/高岡市立五位中学校3年生)
「水がつなぐ自然と家族」

・優秀賞 9編
厚生労働大臣賞
安藤萌々愛(栃木県/宇都宮短期大学附属中学校2年)
「命を守る貴重な水」

農林水産大臣賞
吉永茉利香(宮崎県/宮崎市立生目台中学校2年)
「『水は命。』」

経済産業大臣賞
関日陽(神奈川県/聖園女学院中学校1年)
「大切な水のためにできること」

国土交通大臣賞
小川知映(群馬県/群馬大学教育学部附属中学校3年)
「かわのかお」

環境大臣賞
河井紀乃(京都府/京都市立西京高等学校附属中学校2年)
「水は誰のもの?~水のリレー~」

全日本中学校長会会長賞
池亀廉(北海道/長沼町立長沼中学校2年)
「祖父が教えてくれたこと」

独立行政法人水資源機構理事長賞
石谷優翔(大阪府/四條畷学園中学校2年)
「水の大切さ」

水の週間実行委員会会長賞
山川梨緒(沖縄県/多良間村立多良間中学校3年)
「『生きる』につながる『水』」

全日本中学生水の作文コンクール中央審査会特別賞
山口夏果(埼玉県/川越市立初雁中学校2年)
「限りある資源、水」
《相川いずみ》

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