変わる大学入試、迫る次期学習指導要領…新しい時代を拓く双方向指導「Z会メテウスメソッド」とは

 高大接続改革に伴う大学入試改革により、これからの「学び」はどう変わるのか。未来を見据え「新しい学び」を授業に取り入れているZ会エデュース代表取締役社長の高畠尚弘氏と、ICT CONNECT 21の寺西隆行氏に話を聞いた。

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インタビューに応えるZ会エデュ―ス代表取締役社長 高畠尚弘氏(左)とICT CONNECT 21 事務局次長 寺西隆行氏(右)
  • インタビューに応えるZ会エデュ―ス代表取締役社長 高畠尚弘氏(左)とICT CONNECT 21 事務局次長 寺西隆行氏(右)
  • Z会エデュ―ス代表取締役社長 高畠尚弘氏
  • ICT CONNECT 21 事務局次長 寺西隆行氏
  • インタビューに応えるZ会エデュ―ス代表取締役社長 高畠尚弘氏(左)とICT CONNECT 21 事務局次長 寺西隆行氏(右)
 いよいよ2017年3月、2020年からの「次期学習指導要領」が発表される。高大接続改革に伴う大学入試改革により、これからの「学び」はどう変わるのか。未来を見据え「新しい学び」を授業に取り入れている、Z会の教室事業会社「Z会エデュース」代表取締役社長の高畠尚弘氏と、ICT CONNECT 21の寺西隆行氏に話を聞いた。

 Z会エデュース代表である高畠尚弘氏は、自らも国語の講師として、Z会の教室で20年以上に渡って指導を行っている。寺西隆行氏は、2016年に新しい学びを提供する「Z会東大進学教室メテウス」のコンセプトメイキングに携わり、その知見を生かし、現在は教材コンテンツや教育ICTサービスなどの流通や利活用を促進する団体「ICT CONNECT 21」で学習・教育オープンプラットフォームの実現に向けて取り組んでいる。

 教育の最前線に立つ2人が、次期学習指導要領で変わるこれからの「学び」について、概要や大学入試改革で知っておくべきポイント、いち早くアクティブラーニングを授業に取り入れているZ会エデュースが運営する「Z会東大進学教室メテウス」の学習効果までを語った。

◆入試でも「これまで見たことのない問題」が増える

--大学入試改革において、押さえておくべきポイントは何でしょうか。

寺西氏:これから社会に出る子どもたちは、大人ですら経験していないことに立ち向かわなければいけない時代を生きることになります。そのため、大学入試においても、今までの知識や思考力、表現力というのは大事にしながらも、見たことのない問題が出される傾向が高まっていきます。これまでの過去の問題傾向を分析し対策するという勉強法だけでは通用しません。

 対応するためには、さまざまな話題について「なぜ?」と考える訓練をしておかないと、いきなり出される問題に戸惑ってしまいます。中学生・高校生の段階から、その訓練が必要です。

--となると、今までやってきた勉強方法は通用しなくなり、新しい学習に挑戦していかなければならないということでしょうか。

寺西氏:教科や科目の大きな枠組みは変わりませんから、今まで通り塾や予備校などで訓練することは必要でしょう。それに加え、これからは問いに対しての「なぜ」を考えて答えを出し、その答えに対して「本当にそれでいいか」という問いを投げかける、という状況を何度も経験しなければいけません。これが、文部科学省が次期学習指導要領で求めている「主体的・対話的で深い学び」です。

 次期学習指導要領が実施されるのは2020年から順次となりますが、「主体的・対話的で深い学び」など、新しい時代に必要となる資質や能力は、すでに高大接続改革と一体として求められています。次期学習指導要領が告示される2017年の3月以降は、その傾向にどんどん拍車がかかるだろうと予想されます。つまり、2018年からも、今までの傾向と対策というものとは全然違う、いわゆる「新傾向」という大学入試問題が増加するでしょう。

◆すでに改革は始まっている

--改革自体は2020年から始まるものであっても、2018年から変化はあるということですか。

寺西氏:正確に言うと、次期学習指導要領の実施は2020年4月からですが、改革はもう始まっています。この改革は、あくまで「知識の削減は行わず、質の高い理解を図る」ということなので、知識を軽視して、応用力だけを養成するわけではありません。

 そのため、今後の学校授業では「カリキュラムマネジメント」、つまり「やりくり」が必須です。今の子どもたちが次の社会を生き抜くには、それぐらいたくさんの力が必要だということなんです。

--それに伴って、保護者からも新しい指導が求められていくと思いますが、指導する側としてはどのような指導を考えていますか。

高畠氏:これから増えるのは「見たことのない問題」、それも「正解が1つではない問題」です。これらの問題の答えとして、実は突飛な発想というのは求められていないんです。理由と結果を両方書くこと、論理的に書けるかどうかで点数が決まってきます。

 新しい入試で求められる力が、この「問題解決能力」です。社会で問題になっていることについて「私はこう思う、なぜならこのように考えるからだ」と他人を説得するような力が、これから求められてくると予想されます。発想力も貴重ですが、「誰も思いつかないけれど、論理がめちゃくちゃ」という回答では、他人を説得できません。

 だから、指導の仕方として「正解は1つじゃないんだよ」という前提に立って教える方向に変わってきますが、「どういうふうに答えを作っていくか」という指導は変わらない。論理的に物事を考えて、論理的にアウトプットする、という指導自体は変わらないというのが、我々の今の立ち位置です。

◆知識力ではない「正解のない問題」に立ち向かう力

--「正解がない問題」に対応するには、どのような力が必要でしょうか。

寺西氏:正解がないということは、次期学習指導要領で言うところの、「習得・活用・探求という学びの課程の中で、問題発見・解決を念頭においた深い学びが実現できているかどうか」というところに繋がってきます。

 今までは前例をたくさん頭にストックして、その前例と同じものをポーンと頭の中に出せるかということは大事だった。けれど、おそらく今後はそうではないんです。

高畠氏:今、みんなパソコンやスマホを活用していることも大きいと思います。知識はそこにストックされているので、覚えなくても問題ありません。重要なのは、それをどう理解して、どう他人に伝えるか。だから、知識の量を問うのではなく、中学入試でも「あなたはどう考えるのか」という問題が増えている。公立一貫校の適性検査もそうですね。

--逆に、私立校が公立一貫校の問題に合わせている傾向もありますね。

高畠氏:ええ。変わってきています。知識をたくさん覚えられる、暗記できる子よりも、それを組み合わせて考えられる子の方が大学入試に強いので、中学も高校も入試問題を変えてきています。もちろん、知識のインプットがないなら、何もできないというのは当たり前で、ある程度の知識は必要ですが。

◆日本人は読解力が弱い…鍵は他者の意見を汲み取る力

--決して暗記する必要はない、というわけではなく、これからの子どもたちにはインプットとアウトプットをバランスよく養える環境と経験の場が必要そうですね。そうすると、これからどう勉強したらいいんだろうというのが、保護者も子ども自身も今後とまどう点だと思います。

高畠氏:たとえば「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」のサンプル問題には、「3つのグラフを見てあなたの考えを書きなさい」という問題が示されています。「3つのグラフ=他者の意見」として考えれば、他者との対話に対して、自分の考えを述べる問題だと読み取れます。大事なのは、客観的な資料に基づく記述であって、子どもの個性ではない。与えられたものを、どう自分の中で情報処理するか。

寺西氏:OECDが行っている、国際的な学習到達度に関する調査「PISA2015」によると、以前に比べて日本の子どもは読解力が弱くなったという結果が出ています。ここで言うPISAの読解力とは、「AI(人工知能)では敵わないような読解力」です。今や情報はネットに溢れていますが、多数の情報を繋ぎ合わせ、解釈や思考をすることで新たな考えを導く力が日本の子どもは弱いと言われています。だからこそ、文部科学省はICTの環境整備と情報の活用を推進しているわけです。詰め込み教育、暗記勝負ではAIには絶対に敵わないですから。知識量ではなく、読解力がなければ、AIに負けてしまう。

◆対話授業は講師のアクティブラーニングも必要

--対話、ともなると、1人だけでは学習しづらいと思うのですが、こういった問題が出るとわかった時に、どのような学習をすればよいのでしょうか。

高畠氏:「対話的」であるという部分では、他者との話し合いによって自分の認識が改まる「双方向・多方向」なアクティブラーニングなどはすごく有効だと思います。ただ、学校でのアクティブラーニングは、同じ生活をしている生徒たちで行いますから、同質的な意見が集まる可能性があります。

 一方で、塾や開かれた場ではいろいろな学校の生徒がいるため、女子校と男子校の生徒が一緒にアクティブラーニングするなど、より多様な意見が出る効果があります。そういう意味では、学校以外の場で行われる授業やイベントなどに参加して、多様な考え方に触れることは大切です。

--メテウスの授業では生徒に多く問いかけて、話させて、盛り上げていって、答えを出すというイメージでしょうか。

高畠氏:生徒同士対話させることもありますし、答案にあるものを板書して、それについてみんなで考えさせる、ということもしています。アクティブラーニングで大事なのは、議論を形になるところまで持っていかなければならない、ということです。

 授業をやってみてよくわかったのが、途中で誰もわからないと言うと、そこで議論が終わってしまう。講師は、議論が徐々にいくつかの正解に近づいていく雰囲気を作らなければいけないのです。つまり、講師の側にも、学習指導要領にある「学びに向かう人間性」が必要です。自分に足りないと思ったことがあれば、学ぼうとする。講師も日々学ぶ必要があり、一定の力量が求められます。

 もともと長年に渡って通信教育を行ってきたZ会は、多くの生徒が答案を書く、というアウトプットを見てきたノウハウを持っています。それに、Z会の授業はとにかく生徒を当てて、黒板に書かせて、講師がチョークでその場で採点する、というような、とにかく発言を求める形式が今までの授業でも採られてきました。メテウスの開始前から、実際にアクティブラーニングを取り入れていた先生もいます。つまり、対話や双方向授業を打ち出す前から、すでに議論を推進する力が備わっている講師が多く揃っていた、ということです。

 新しい学びに対応するアクティブラーニングをメテウスに取り入れる、と踏み切った1つの理由には、講師に対するこういった「信頼感」がありましたね。そして、授業の事例を持ち寄って話すことで、先生同士のアクティブラーニングにもなり、お互いを高め合える。正解も、決まった方法もないんですよ、アクティブラーニングって。

寺西氏:極端に言うと、1人でもアクティブラーニングはできるんですよ。ずっと頭の中で、問いが立てられているという状況こそアクティブラーニングなんですよ。「なぜだろう、なぜだろう…」って。でも、1人ではなかなか煮詰まってしまうので、他人がいるとそこに新たな視界が開ける。それが、他者がいる、ということの大事なところなんです。

◆自宅の映像授業でインプットを追加する

--メテウスの授業で、アクティブラーニングを取り入れてどんな効果がありましたか。

高畠氏:授業で扱ったことは定着している生徒は多いですが、しっかり定着するように復習を促すことが大切です。授業の2時間のうち、アクティブラーニング的な要素を入れて、足りなくなる部分を映像で補完していくという方針でやっています。全国配信もしているZ会東大進学教室の講師による映像を利用して、自宅でさらにインプットし、練習を積ませています。

 “Z会のアクティブラーニング”とか“メテウスメソッド”をZ会東大進学教室メテウスで作って、それをさらに高校受験のZ会進学教室や東大個別指導教室の「プレアデス」など、ほかのZ会の教室にも広げていきたいと思っています。関西のZ会京大進学教室も、双方向指導を積極的に取り入れています。生徒が自発的にお互いに高め合うようなメソッドを拡充していくことは、塾としての強みにもなると思います。

--普段のメテウスの授業では、具体的にはどんな問題や課題が出されているのですか。

高畠氏:今までの授業で使っていたテキストから、アクティブラーニングに向く問題を先生が選んでいます。数学なら、別解の多くある問題、英語なら記述や作文などですね。

--中高一貫校の生徒が対象ということですが、どのような学校の生徒が通われていますか。

高畠氏:Z会東大進学教室メテウスは現在、首都圏に5教室あります。東京は御茶ノ水、渋谷、新宿、池袋、神奈川は横浜に教室を構えています。首都圏で言えば、いわゆる御三家などの私立中高一貫だけでなく、広尾学園や渋谷教育学園幕張中高、洗足学園の生徒など、エリアにこだわらず学校の裾野が広がっていますね。

--メテウスに向いているのはどんな生徒ですか。

高畠氏:メテウスメソッドに共感してくれる人でしょうか。また、勉強の楽しさがわからない、もっと楽しく勉強したいという子にも。提供する側としては、多様な人が触れ合う、活気のある教室にしたいと思います。Z会は詰め込まないので、宿題が少ないんです。勉強の面白さがわかったらやるだろうという、生徒を大人扱いした発想ではあるんですが、実際にそれで力をつける生徒は多くいます。

 入試が変われば変わるほど、Z会、そしてメテウスの方針が向いてくると思っています。すでに一部の大学入試では論理的に自分の考えを書かせる問題が増える傾向にあり、そうすると詰め込み式の学習に意味がなくなってきます。もちろん知識は大事ですが、中高一貫校は知識のトレーニングを学校でしっかりやっているので、塾でまでやらなくていいと考えています。

--入る際の入塾テストはありますか。

高畠氏:ありますが、そんなに厳しくないです。知識がないと議論ができないので、普通の学力試験です。むしろ、やる気を重視しています。あとは進度ですね。数学などで学校が遅い場合は、映像授業やプレアデスなどの個別教室も用意しています。

--メテウスの受講生からはどんな反響がありましたか。

高畠氏:アンケート調査では、中学生からは「人に説明することで自分も理解できた」という声や、「学校のテストの点数が上がって、前よりも数学が好きになった」という喜びの声がありました。

 高校生になると、「1人だと行き詰まってしまう問題でも考え方を共有しながらできるので、諦めずに頑張れる」「自分が考えていた解法よりもはるかに多い解き方があって驚いた」という勉強方法の効果から、「1つのテーマについて深く考えることができた」「さまざまな人の意見や考えが聞け、自分の考えのデメリットを知り、広い視点でいろいろな考えをみつけることができた」といった深い意見まで出ています。

--Z会の講師のみなさんが授業で心掛けていることは何でしょうか。

高畠氏:勉強を嫌いにさせる授業にはしないことですね。各教科の本質的な内容を理解する楽しさを早めにつかんでほしい。だから中学1年生からの受講をお勧めしています。早ければ早く始めるほど、勉強が楽しくなると思います。

--ありがとうございました。

 中高一貫校の生徒を対象にした「Z会東大進学教室メテウス」は、首都圏では御茶ノ水、渋谷、新宿、池袋、横浜の5教室展開。中学部・高校部とも、1クラス15名以下の授業で、双方向・多方向にやりとりするアクティブラーニングの授業スタイルを取り入れており、自宅でも映像授業で予習・復習を行えるのが特徴だ。

 2月・3月は中学入学前の準備を行う「新中1スタートダッシュ講座」を開催し、Z会東大進学教室の授業を気軽に体験できる場を用意する。また、2月12日から4月1日までは、各教室で入会説明会を実施。4月から開講する本科授業について、詳しく知り、体験できる機会になりそうだ。

 なお、大学入試改革については、4月から中高一貫校に通う新中学1年生とその保護者を対象にした講演会も開催予定。不明点が多い場合は、足を運んでみるとよいだろう。
《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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