コンセントの向こう側を親子で実感…森・水・電気のつながりがわかった「J-POWERエコ×エネ体験ツアー2022」

 2022年8月9日と10日にJ-POWER「エコ×エネ体験ツアー2022@オンライン水力小学生親子編」が開催され、ダムや発電所のバーチャル見学や森の体験プログラム、楽しい科学実験を通じて親子が自然と電気のつながりを学んだ。ツアーのようすをレポートする。

教育イベント 小学生
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J-POWERエコ×エネ体験ツアー@オンライン小学生親子編~オンラインで森・水・電気のつながりを学ぼう~
  • J-POWERエコ×エネ体験ツアー@オンライン小学生親子編~オンラインで森・水・電気のつながりを学ぼう~
  • J-POWERエコ×エネ体験ツアー@オンライン小学生親子編~オンラインで森・水・電気のつながりを学ぼう~
  • 参加者にはオリジナルリングノート等の学習キットが配られた
  • キープ協会の「おのの」が明るく楽しく進行を務める
  • はじまりの挨拶はJ-POWER「しげさん」から
  • リアクション体操をしながら、楽しくコミュニケーション
  • J-POWERの御母衣発電所(岐阜県)と奥只見発電所(新潟県)の位置
  • 御母衣ダム・発電所見学は佐々木所長が解説

奥只見の自然豊かな森を体験

 休憩をはさんでエコ(自然)について学ぶ時間へ。奥只見までの道のりを映像で体験。東京から新幹線で1時間半のJR浦佐駅から車で奥只見へ。水がとてもきれいな魚野川流域には大きな田んぼが広がる。この地域は魚沼産コシヒカリというおいしいお米が取れ、八海山や緑川という日本酒も有名だ。おいしいお酒は、おいしいお米ときれいな水があってこそ。お酒の名前にもなっている八海山は標高1,778mで、この地域にある3つの高い山、八海山・中ノ岳・越後駒ケ岳は「越後三山」と呼ばれている。奥只見はこれらの山々を越えた奥にある。

 道を進むと信号が縦に並んでいることに気づく。横並びでは信号に積もった雪が車に落ちて危ないのだという。また道路には雪を溶かすための消雪パイプがあり、家屋や建物の土台は高く、玄関も高い位置にある。冬には2mもの雪が積もるため、玄関や1階の窓が雪に埋もれないように作られている。雪国ならではの工夫だ。

奥只見ダム・発電所に向かう道沿いの家屋は雪が深く高い位置に玄関がある

 奥只見へ向かうシルバーラインと呼ばれる道路は、昭和32年、奥只見ダムと発電所の工事に使う材料や機材を運ぶために作られ、完成までに3年かかった。全長22kmで約80%にあたる18kmがトンネルとなっている。また珍しいことに、トンネルの中に分かれ道があって、銀山平という江戸時代に銀が採掘された場所に出られる。トンネルを抜けると奥只見に到着。ダムと湖が見えてくる。

 ここからは奥只見の現地から生中継。レポートは奥只見観光の佐藤氏が務めた。標高約700mで周囲は森に囲まれた地にある奥只見ダムは、コンクリートの重さだけで水を支える重力式コンクリートダム。長さは480m、高さはビル40階ほどの157m。コンクリートの量は東京ドーム1.3杯分で、その打設には4年の歳月を要したという。

 ダムの反対側の奥只見湖は日光の中禅寺湖と同じぐらいの大きさで、遊覧船も営業され紅葉のシーズンにはたくさんの観光客が訪れる。都心で桜が咲くころもまだまだスキーが楽しめるといい、「ここは自然が豊かです。魚沼産コシヒカリや山菜、きのこなどもおいしく、四季折々の風景が楽しめるので、ぜひ皆さんも一度、遊びに来てください」と広大な自然を背景に佐藤氏が呼び掛けていた。

奥只見観光の佐藤さんが奥只見ダム周辺でライブ中継

ブナの森が気持ち良い理由を実感

 次に銀山平のブナの森をバーチャル映像で体験。まずは奥只見ダムや湖、銀山平の森の位置を地図で確認する。奥只見ダムは新潟県と福島県の県境にある只見川をせき止めて作られ、その先の源流は尾瀬沼につながる。実際に訪れるツアーでは、奥只見船着き場から銀山平船着場まで遊覧船で渡っていく。その遊覧船は尾瀬にも行けるという。

奥只見湖の遊覧船を使えば尾瀬にも行ける

 森の体験は「おのの」と同じキープ協会で働く「ぱりんこ」が案内した。

 森の中に入ると少しひんやりして、葉っぱの新芽もとても柔らかく、木の赤ちゃんもいる。ネズミの穴やキツツキの巣などの生き物たちの住処(すみか)や、お母さんが産んだ卵を葉っぱにくるんで落とすオトシブミという虫も見つかった。ブナの森にはいろいろな形の葉っぱがある。

枯れ葉や木の赤ちゃんで覆われた森の地面

 ブナの森を散策したのちに、赤、青、黄のブレイクアウトルームに分かれて「葉っぱっぱじゃんけん」を実施。参加者は事前に用意しておいた5枚の葉っぱで「じゃんけん」に臨む。各ルームのスタッフが提示する葉っぱに関してのお題に当てはまるものを、掛け声とともに一斉に出しあった。今回、勝ち負けは自分でジャッジする。

 まず「一番大きい葉っぱ」のお題で練習。スタッフよりも大きい葉っぱを出した参加者が勝ちとなる。練習から大いに盛り上がり、本番では「茎の部分が長い葉っぱ」「ギザギザが多い葉っぱ」「葉の表面に穴が多い葉っぱ」といったお題に合わせ、参加者はみな思い思いに葉を選んで出していく。「おのの」は「葉っぱもいろいろな種類があり、同じ種類でも1枚1枚違うので自分の周りの葉っぱをじっくりと観察してみてほしい」とコメントした。

自分で用意した葉っぱで勝負!「葉っぱっぱじゃんけん」

 ブナの森の奥へと進む。ブナは白い木肌が特徴で、触るととても冷たく気持ちが良い。葉はスベスベして、真ん中が少しくぼんで雨を受け止めるのにとても良い形だ。地面の落ち葉をよけるとブナの実が見つかった。ブナの実はとても栄養があるので、熊やリスなど森の生き物にとっては大事な食糧となっているという。

 さらに落ち葉をめくって下に何があるかを見ていく。葉っぱはだんだんと細かくなり、下に行くほど元の形がわからなくなって小さな根っこも出てくる。一番下の土は少し湿っている。土の中にいる小さな生き物たちが落ち葉を食べて細かくして土を作ってくれているこうしてできた森の土から森の生き物は水や栄養をもらう森が元気でいるには水も栄養もたっぷりある豊かな土がとても大切だ。

ブナの森は掘っていくとフカフカの土が出てくる

 ブナの木は寝転ぶのにちょうど良い形で根元が曲がっている。雪の多い地方では、雪の重さで木が曲がってしまい、こうした形の木をよく見かけるという。「おのの」は「このブナの森はとても気持ちが良いです。森にいろいろな生き物たちが元気に暮し、森全体が生き生きとして元気だから、人にとっても気持ちが良いのではないでしょうか。この森がずっと先の未来まで元気でいてほしい、そんな未来を作っていけたら良いなと私たちは思っています」と思いを語った。

ブナ林でゆったりとした空間を過ごす

森と水と電気のつながりを知る、ドクターの「科学の実験教室」

 エコとエネが本当につながっているのか、森で保持された水がどのように電気に変わるかを解き明かす「ドクター」の実験の時間。助手はJ-POWERの「やまゆき」が務めた。

 まず森の「土」に注目。木がたくさん生えている森の土と植物があまり生えていない学校の運動場のような土を比較する。この実験では運動場の土としてキッチンペーパーを重ね合わせたものを代用。紙はセルロースという小さな粒の集まりで、運動場の土も粘土の小さな粒の集まりのため性質が似ているのだ。

運動場の土を森に入れると、どのように変わるのか?

 森に見立てた箱に運動場の土(キッチンペーパー)や落ち葉、水、ミミズやクモ、ムカデ、微生物、きのこなどの小さな生き物たちを入れていく。それらの生き物たちが森の土の中で24時間、毎日ガサゴソと活動するようすをイメージする。時間がたつと運動場の土は生き物たちの活動によって丸っこい形の土に変わる。

 森の土と運動場の土をペットボトルに同じだけ入れて、それぞれに同量の雨を降らせる。運動場の土は水はけが悪く、森の土は水をよく吸収する。水のしみこみ方のスピードは全然違うことがわかる。

 どちらの土が植物は育ちやすいかを見るため、それぞれの土にストローで息を吹いてみる。すると、森の土では空気が通り、運動場の土は空気が通らず水があまり吸収されないことが見て取れた。過剰な水は植物を腐らせてしまいかねない。植物の根も酸素が必要で、空気の通りが良い森の土の方が植物が育つ条件として望ましいことがわかる

 また、森の土は水を吸収する量が多く、下に流れ出る量も少ない。それは雨がしばらく降らなくても森が青々としている理由だと「ドクター」は説明した。

 続いて森の土の入ったペットボトルを山や森に見立てて、複数個合体。そこに雨を降らせると、雨は地面にしみこみ、地下へとゆっくり流れていく。この地下水が飲み水や農業用水、そして水力発電に利用されることになる。森の機能を保つことが、いかに人間の生活に有用なのかがわかる内容だ。

多くの水を含む森が集まり、地面を通って地下水へ

 さらに水力発電の実験を実施。ペットボトルを水を溜めるためのダムに、コイルと磁石、回転する水車の入った装置を発電機に見立てた。

地下水が流れてダムへ、そのダムの多くの水が発電所の発電機を回す
高いところから多くの水が落下して電気が起きている

 水を流して発電を開始すると、水車のプロペラとともに磁石が回って電気が起きる。この水力発電の欠点は、水がないと電気を起こせないこと。そのため必要な時にだけ電気を起こし、必要がなくなったらすぐに止めることを徹底する必要があり、同時に水が常にある状態に管理することが大切なのだ。

 万が一、雨が降らなければ水力発電には大問題だが、そんなときには雲を呼んで雨を神様にお願いする場合もあるといい、画面の向こうでエコ×エネ名物の「雨乞いダンス」を参加者全員で踊る場面も。

エコ×エネ名物の「雨乞いダンス」

 最後に「ドクター」は、「水力発電では、まず森を考える必要があります。その森が成立するには土の中の生き物や落ち葉などの働きが必要です。特に生き物の働きのおかげでフカフカの土に変わり、雨水は森で一度受け止めて地下へとゆっくり流れる。こうした森の働きは『森のダム』、水力発電のために人が作ったダムは『人工のダム』といえます」と自然と人間の力を合わせたものが水力発電だと解説した。

水力発電は「森のダム」と「人工のダム」で成り立っている

親子で振り返り、これからのアクションにつなげる

 親子でツアーを振り返る時間へ。リングノートに感じたことや気づいたこと、発見したこと、驚いたことなどを書いていく。そして再び赤、青、黄のグループに分かれて発表。

感想や気づいたことをグループで発表していく

 各グループで子供たちは自分の感想を仲間と共有した。エコとエネのつながりへの驚き、自然と電気を大切にしたいという感想が目立つ。またダムには森が必要なので、街にはダムがないといった気づきもあった。ドクターの実験が面白かったという声とともに、実際「エコ×エネ体験ツアー」でダムに行ってみたいという声もあがっていた。

 おわりの会で「しげさん」は「エコとエネ、森と水と電気の不思議なつながりについて、いろいろな気づきがあったと思います。今日は水力発電でしたが、発電の仕組みもいろいろあります。エネルギーや環境、自然がなければ我々の暮らしは成り立ちません。皆さんも関心をもっていろいろと調べ、自分でできることをやっていただければうれしいです。今日から皆さんもエコ×エネの仲間です。またどこかでお会いできることを楽しみにしています」と呼びかけた。最後は画面越しでの記念撮影で盛り上がり、参加者親子の拍手の中、2時間半のツアーは幕を閉じた。

また会いましょう!

自然と電気を大切に。リアルツアーにも期待が高まる

 プログラムに参加した親子4組に感想をお聞きした。

コンさん親子

 「初めてで難しい部分もありましたが、理解できるところもたくさんあって安心しました。一番印象に残っているのはドクターの実験で、実際にやってみたいと思いました。夏休みの宿題にも使えると思います。今度はリアルのツアーに参加して、実際にダムを見学したいです」(コンさん)。

 「姉も以前、エコ×エネ体験オンラインツアーに参加させてもらい、脇で見ていた本人がやってみたいとなりました。小さいころに宮ヶ瀬ダムで発電のサンプルを見た記憶があります。これからも家族で出掛ける機会があれば、いろいろなものを見せてあげたいですね」(コンさんパパ)。

あいあいさん親子

 「奥只見ダムがとても大きくて、どうやって作られているんだろう…ともっと知りたくなりました。電気を使いすぎないようにこれからも注意したいです。将来は、科学者になりたいと思っています。電気をもっと楽な方法で作れるように、いろいろなものを発明して自然や森林を守っていきたいです」(あいあいさん)。

 「今回、私も横で拝見させていただいて、水力発電と森がこうしてつながっているのかとしっかり理解できました。本当にこれからも自然を壊してはいけないなと実感しました」(あいあいさんママ)。

インタビューに答えてくれたのは、あいあいさん親子、コンさん親子、みちるさん親子、ふーさん親子の4組。「子供たちからパワーをもらいました!」(by J-POWERの「やまゆき」)

みちるさん親子

 「ダムが好きなので参加しました。ロックフィル式のダムに行ったことがなかったので、御母衣ダムはすごいと思いました。電気と自然はつながっていて、電気を使いすぎれば自然に負担がかかるので、これからは節電を心がけようと思いました。将来は自分でダムを設計する技術者になりたいです」(みちるさん)。

 「コロナの中、オンラインツアーを開催していただき、ありがたい気持ちです。オンラインでもこれだけ盛り沢山でしたので、リアルならばどれだけすごい体験になるのかと感じました。大変な状況を乗り越えて、またリアルのツアーが復活すると良いですね」(みちるさんパパ)。

ふーさん親子

 「母がリセマムを見て応募しました。光と電気の速さが同じだということ、地下に発電所があることが面白かったです。使っていない部屋の電気は全部消すようにしていますが、節電はやはりとても大事だと思います。将来の夢は作家です。自然や動物を物語にできると良いと思います」(ふーさん)。

 「本当に飽きさせない仕組みや実験が工夫されていて、現地でいろいろと体験したいという気持ちが高まりました。かこさとしさんの『ダムのおじさんたち』という絵本がありますが、そのダムを作る過程の大変さを今度は聞いてみたいと感じました」(ふーさんママ)。


 ツアー後の質問タイムでは、さらなる問いをもった子供たちから水の循環や蓄電、木と土の関係などの質問があり、スタッフは丁寧に回答していた。「エコ×エネ体験ツアー」はリアル、オンラインどちらも親子で貴重な体験ができる。電気と自然の大切さを実感したい、親子で一緒に体験したい、エコ×エネの仲間になりたい来年の小学4年生から6年生のお子さんと保護者の方々は、ぜひ夏休み前のご応募をお忘れなく。

ひととエネルギーと環境を“つなぐ”
J-POWERエコ×エネ体験プロジェクト
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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